妻を性的消費物として見ていないか?セックスレスから抜け出す2つのポイント。
妻を性的消費物として見るとはどういうことなのか、なぜそういった現象が起こるのか、僕らは一体どうすればいいのか、この記事では詳しく解説する。
愛し合っているならセックスができるはず。あなたはそう思いますか?
この記事はポッドキャスト「アツの夫婦関係学ラジオ #546 妻を性的消費物して見ていないか?セックスレスから抜け出す2つのポイント」の解説記事となります。ぜひポッドキャストと合わせて お読みください。
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結婚をしたのは愛し合っていたからだ。結婚を継続しているのも愛し合っているからだ。愛し合っているならセックスはできるはずだ。なぜなら、セックスは愛し合っている二人がする行為だからだ。だから、「夫婦はセックスするのが当たり前」なんだ。「結婚してるんだからセックスするのは当然」と言う男性にはそんなロジックがあります。
こう考える男性は多いですが、妻側の心理としては違うようです。ただ早く終わって欲しいと願っている。物理的な力の差に恐れを感じ断れないでいる。妻は夫を心地よい状態にさせるべき存在という先入観にとらわれている。そんな声を以前のポッドキャストで直接女性ゲストからお聴きしました。
ぼくら男性にとっては耳が痛いほど参考になる話が満載なので、ぜひ上リンク先の放送を聴いて欲しい。
妻が恐怖を感じながら耐え忍ぶ行為が愛の証であるとは考えられないですよね。そのような行為は「夫のマスターベーション」でしかない。ぼくにも心当たりがありますし、この記事を読んでいるあなたにも心当たりがあるかもしれない。
これは女性の「性的対象化」と呼ばれています。Nature Reviews Psychologyの記事によると、性的対象化は女性への性差別や暴力を助長し、女性に自分の体へのネガティブな感覚を植え付け、認知機能にも悪影響を与えると言われています。
Sexual objectification (treating a person as a body or collection of body parts) involves a cultural prioritizing of women’s sexual appearance and appeal over other attributes. Sexual objectification is prevalent, permeates many aspects of women’s lives, shapes general assumptions about women and exacts many consequences on women and society.
性的対象化とは、人を体や体の一部として扱うことで、女性の性的な見た目や魅力を他の特性よりも優先する文化です。これは広く蔓延しており、女性の生活の多くの面に浸透し、女性についての一般的な仮定を形成し、女性と社会に多くの影響を及ぼします。
In general, sexually objectified women are perceived more negatively, and as less competent and less fully human than women who are not sexually objectified. Exposure to this cultural messaging has broad consequences and fuels sexist attitudes and violence towards women. A central consequence for women is self-objectification, which is associated with a more negative body image; diminished mental, physical and sexual health; and impaired cognitive performance.
一般的に、性的に対象化された女性は、そうでない女性に比べて否定的に見られ、能力が低く、完全な人間として見られないことがあります。この文化的メッセージへの曝露は、性差別的な態度や女性に対する暴力を助長し、広範囲に影響を及ぼします。女性にとっての主な影響は自己対象化であり、これは体に対するネガティブなイメージ、精神的・身体的・性的健康の低下、認知能力の障害と関連しています。
性的対象化は女性に対する視覚的評価(外見がセクシーかどうか)に基づくため、テレビ、雑誌、SNS、ゲームなど、性的な女性が頻繁に登場するメディアを消費すればするほど、女性への性的対象化が強くなると言われている。
https://nus.edu.sg/alumnet/thealumnus/issue-128/perspectives/panorama/where-do-we-draw-the-line
高級香水ブランドでは頻繁に性的対象化がマーケティングに使われている。直接的にセックスをイメージさせるものが多い。
日本ではビールポスターで長年この技法が使われてきた。
https://www.pinterest.jp/pin/799037158901325793/
現代ではアニメやゲームで性的対象化が使われているが、あまりにも当たり前に存在しているため、その違和感に気が付かない人がほとんどだろう。こちらの方が香水広告より問題な気がするが、世間では問題視されることが少ない。
アニメ、映画、ドラマの場合、ストーリーに沿ってこれらのメッセージが送られてくるため、人は違和感を感じる隙を与えられず、自身の中に性的対象視点を育てていく。次にスマホを開く時は「このコンテンツは性的対象化が行われていないだろうか?」と考えて欲しい。きっと今までとは印象が変わるはずだ。
では、夫婦間における性的対象化に話を戻そう。夫が妻を性的対象物として見るきっかけはここまで述べたような社会的及び文化的コードが原因だが、「夫婦」という二人の単位に絞った場合、なぜ「妻に対する性的対象化」が起こるのか?
そこには二つの原因がある。
「セックスの定義」の未設定問題
あなたにとっての「セックスの定義」とは何だろうか?あなたは自分たち夫婦のセックスをどう定義づけしているだろうか?自分たちのセックスの定義について考えることで、性的対象化のトラップから抜け出しやすくなるはず。
ちなみに夫婦の葛藤や仕事においても、その事象を「どう定義するか?」はとても重要であり、感情に振り回されずに対処できるようになるので「定義付け」は習慣化しておくと便利です。以前の記事で書いた「前提条件」と合わせるとなお良いです。
自分たち夫婦のセックスをあなたはどう定義付けしているだろうか?理想としているセックスのあるべき姿が、あなたの中にあるはずだ。それを思い浮かべてみよう。
2人が愛情を確かめ合うもの? 2人が愛し合っている証拠? 2人が楽しめるもの? 2人の絆を強化させるもの?
では次に、実際にあなたたち夫婦の中で行われているセックスはどういったものか考えてみよう?それは自分たちが理想とするセックスのあるべき姿だろうか?
妻から体に触れられることを拒まれている。妻がひたすら早く終わってほしいと願っている。夫が楽しみ、妻が我慢する。そんな状況になっていないだろうか?あなたの妻があなたとのセックスを拒んでいるのなら、それはあなたが理想としているセックスの定義とはかけ離れた行為を行っているのかもしれない。
なぜこういったことが起こるのか?
そこには2つの理由がある。1つはセックスという行為自体に対する教育の欠如、もう1つは「男がして、女がされる」というセックスに対する偏った前提条件の存在だ。
僕らは義務教育で性教育を受けるが、実際の性行為そのものに対する教育を受けることはない。セックスとは愛情を感じ合うものであり、2人が楽しむものという情緒的側面はもちろんすっぽりと抜け落ちているのだ。
これは中学校の性教育に関するテキストだ。性感染症やエイズなど性に伴う病気に関することは記述されているが、性行為そのものに対する説明はない。
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000838180.pdf
なぜ、こんなことが起こるのか?それは1998年に制定された通称「はどめ規定」が原因だ。
日本の教育課程では、中学1年生のときに、成長に伴い男女の体がどのように成熟していくかや、ヒトの受精卵がどう胎内で成長するのかを学びます。しかし教科書には、受精の前提となる性交についての記述はありません。その理由は、国が定める学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という一文があるためです。これが通称「はどめ規定」と呼ばれています。
はどめ規定は最低基準であり、それぞれの学校が必要と感じれば、セックスに関する詳しい授業を行なっていいことになっている。だが、実際に詳細授業を行なった東京都足立区の学校は都議会で槍玉に挙げられた。
少し長いですが引用します。
樋上さんは、若年層の望まない妊娠が貧困につながることや、高校1年生の中絶件数が中学までの総数の3倍に跳ね上がる実態があることから、生徒たちに性の正しい知識を身につけてもらう必要があると考え、授業を行いました。生徒たちの自由な話し合いを大切にし、「自分で子どもを育てられる状況になるまで性交は避けた方がよい」と話したうえで、避妊の方法や中絶が可能な期間が法律で決まっていることなど、より踏み込んだ知識を伝えました。
学習指導要領では、避妊や人工中絶は高校で扱う内容になっています。しかし、樋上さんがここまで踏み込んだ内容が必要だと考えたのは、子どもたちが誤った情報に振り回されていると感じていたからです。授業の前のアンケートで避妊や人工妊娠中絶についての知識を問うと、ほとんど不正解。一方で、生徒の3割弱が「中学でも同意すれば性交してよい」、4割以上が「高校生なら性交してもよい」と答えました。性への関心は高いのに、自分を守る術や情報を持っていないことが明らかになりました。
樋上さんは授業を行うにあたり、内容を事前に保護者に知らせ、区の教育委員会にも授業計画を提出。対象は中学3年生のため、「はどめ規定」にも触れていません。さらに、文科省が示した4つの留意事項に配慮した上で実施しました。
授業のあと、「性交してもよい」と考える生徒の割合は減少。生徒の感想文には「性に関する正しい知識を学ぶことができてよかった」「性は嫌らしいこと恥ずかしいことだと思っていたけれど、そうではなかった」という声がありました。保護者から苦情はなく「性教育は家庭でなかなかできないからありがたい」という声も寄せられたといいます。
しかしその11日後。この授業は厳しい批判を受けることになりました。議員が都議会で「発達段階を無視」した「不適切な性教育」ではないかと疑問を呈したのです。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210826a.html
僕らは学校においてセックスそのものに対する教育を受けておらず、国自体も教育を授ける意思がない。「性は恥ずべきことである。いやらしいものである」そんなメッセージを送っているようにすら見えてしまう。こんな国で育ってしまってはセックスに対する理解が欠けた大人が育つのは当然とも言える。
ヨーロッパでは小学校高学年からセックスや避妊方法について教えるそうで、台湾でもそういった動きがあるようです。
性交や避妊方法をドイツは小学校高学年で、フランスやオランダ、フィンランドは中学校で教えると言います。また、2009年にユネスコが公開した包括的性教育の枠組み「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(2018年に改訂)」の生殖に関する項目では、5~8歳の段階で「赤ちゃんがどこから来るのかを説明する」ことを目標にしています。ヨーロッパの国々をはじめ、アジアでは台湾などがこのガイダンスを踏まえて性教育の方針を打ち出しているのです。
では、僕らはセックスに対する知識をどこで身につけるのか?アダルト動画やコミックや性風俗だ。ネットを開けば当たり前のようにアダルト広告が存在し、繁華街には性風俗店が立ち並んでいる。性教育には及び腰なのに、アダルト業界には異常なほど寛容なのがこの国の実情だ。
9歳のドイツ人少年が習う性行為の知識を、僕ら日本の男性は30歳を過ぎても知らず、女性軽視に偏った性コンテンツを消費する中で性への知識をさらに偏らせていく。妻との関係を悪化させるに十分すぎるほどに。
そうやって僕らは、セックスというのは「男性が楽しむもの、男性が快感を得るものであり、女性は一方的にセックスをされるべき存在であり、快感を提供する側である」といった誤った前提条件を心の中に植え付けていく。女性は性的消費物であり、性的愛玩具であると。
そして無意識のうちに、妻に対しても「この人は自分の性的消費物である」と勘違いするようになるのだ。
もう一度あなたにとっての夫婦のセックスの定義について考えてみよう。2人が楽しむものなのか、2人が愛情を感じ合うものなにか、2人の絆を強化させるものなのか。自分の中にあるセックスに対する知識は、果たしてあるべき自分たち夫婦のセックスの定義を裏付けてくれるものなのだろうか。
おそらくそうではないだろう。自分の中にあるセックスの前提条件と定義をもう一度振り返り、自分たち夫婦はそこにどうやって立ち向かっていくべきなのか、胸に手を当てて考えるべきなのだと思う。
女性の「性の発動条件」の周知レベルの低さ
「女性の性の発動条件」の認知度の低さも課題だ。どういう時に女性はセックスをしたいと思うの? 僕ら男性はおろか、女性自身ですら分かっていないことが多い。
ピルを服用するとセックスに対する意欲が失われるという話を聞いたことがあるかもしれない。これはホルモンの作用が原因だ。女性は排卵期になるとテストステロンと女性ホルモンが上昇し、性に対する意欲が湧いてくることがわかっている。月経周期の10〜13日が性欲が最も高まるタイミングだ。
●10〜13日目(夏!)エストロゲンがピークに達し、性的魅力と生殖能力が最高潮に、オーガズムの強さと達しやさが最高潮に。楽観的で社交的になる。挑戦に適したタイミング。
https://youtu.be/WOi2Bwvp6hw?si=hg3xO3DkzeN9V4Qt
この記事では、女性の月経周期に伴う性欲の変化について触れているのでぜひ読んでほしい。
参考にした動画はこちら。英語だけどビジュアルでわかるので大丈夫。女性の月経周期に伴う変化がわずか2分で理解できる。夫婦ともに見ておいた方がいい。
女性の性の発動条件は月経周期だけではない。産後の夫婦のセックスにとって、最も性のトリガーとなるもの。それは「安心感」だ。
女性にとってセックスは妊娠のリスクがあり、妊娠の先には出産や子供の養育があり、その先には自身のキャリアの断絶、アイデンティティの断絶、社会的孤立といったいくつもの壁が立ち塞がっている。僕ら男性にとっては一晩の快楽であっても、女性にとって数十年に及ぶ長期リスクを伴う恐ろしい行為でもあるのだ。
そこに快楽があったとしても、その快楽を忘れさせる程の破壊力がある。「#545 妻をケアする夫はなぜセクシーなのか?」の中で女性ゲストの方もそうおっしゃっていた。
セックスとは一晩契約ではなく、数十年に及ぶ長期契約である。ならばそこに必要とされるものは、快楽への欲求ではなく安心感や信頼感などではないだろうか。
「この人には、私との数十年に及ぶ親密的な関係を築く覚悟がある」そういった安心感や信頼感がなければ、夫に体を預けることはできない。そしてその覚悟が夫にあるかどうかは、僕ら男性が思っているよりも妻は見抜いている。見透かされていると思った方がいい。
目の前に夫に対する安心感と信頼感信頼感がないから、妻は夫に触れられることを拒むのだ。夫から性的玩具のように扱われていることを身体感覚で感じ取った女性は、自分の身を守るため、本能的に夫から距離を取るようになる。
「産後夫婦の姓」をつかさどるテストステロンとオキシトシン
産後夫婦のセックスレス改善のためには、2種類のホルモンがキーファクターとなる。テストステロンとオキシトシンだ。
月経周期に伴う性欲上昇はテストステロンと女性ホルモンが大きく関与している。先ほどの説明のように月経周期10日目から13日目に大きく性欲が上昇する。言い換えてみれば、この期間以外は女性は性欲をあまり感じられないということだ。
加齢に伴い女性ホルモン分泌量は減少していく。35歳を過ぎると一気に下がる。すると排卵直前以外では性欲を感じることはさらに難しくなる。
https://ourage.jp/column/kounenki_no_chie/2095/
もう一つはオキシトシン。出産時や授乳などを通じて子供に対して分泌されるホルモンだが、夫婦間であってもお互いに対するケアを通じ、オキシトシンを分泌し合うことができる。
「家事育児をしているから妻とセックスができる」と勘違いする男性は多いが(僕にもそういう時期があった)、実際はそうではなく、妻に対するケアを主体的に継続することによって、妻が夫に対する安心感と信頼感を感じ取るようになり、それによって妻は夫に対してオキソシンを分泌するようになるのだ。
そして、お互いに分泌し合うオキシトシンが二人の親密性を構築し、セックスに対するガードを大きく下げることに貢献するのだ。
妻との身体的親密性を手に入れるためには、まず自分が妻を性的消費物として認識していることを認知する必要がある。そのためには、冒頭で述べたように社会的文化的コードが女性を性的愛玩物として扱ってることを理解する必要があるだろう。妻を性的愛玩物として見ていたことに、あなたに直接的な責任がない。しかし、その行為には責任が伴う。妻と愛し愛される関係を構築するためには、自分が妻をどう見ていたのか、正しく把握する必要がある。
そして、自分たち夫婦のセックスのあるべき姿について、自分たちが望む夫婦関係をイメージしながら、もう一度再定義してみよう。それができた時、あなたはきっと自分の妻を性的消費物として見ることは二度となくなり、妻から安心感と信頼感を感じてもらえるようになるはずだ。
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では、また次回お会いしましょう!
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