脅威のカップルセラピーEFTを夫婦生活に応用するための5つのヒント!

脅威の回復率(70%以上)を誇るカップルセラピー 感情焦点化療法(通称EFT)、その効果は実際に体感するのが一番だがカウンセリングに通うことが難しい人もいるはず。そういった方のために家庭に取り入れることができるエッセンスについて書こうと思う。
アツ@夫婦関係学ラジオ 2024.04.26
誰でも

今回は僕が感情焦点化療法(エモーショナリー・フォーキャスト・セラピー、通称EFT)を家庭で実践している方法や、相談者さんとのやり取りの中で見えてきた効果的な方法を取り上げようと思う。今回は誰でも実践がしやすい内容のはずなので参考になるかと思います。

今回の夫婦関係学ラジオはこちら。

#555 脅威のカップルセラピーEFTを夫婦生活に応用するための5つのヒント!

①いきなり実践編(第四以降の会話)を実行しない

第四の会話以降は二人が関係性を改善させるための実践的な内容だ。自分の恐れを理解し、相手に伝え、二人の間に相互共感が生まれ、情緒的な感覚を共鳴させ絆を作り上げていく。どちらかが過去に誤りを犯した際には許すことも後悔や反省を伝えることにもある。

そして、セックスにおいては自己満足のための行為ではなく、お互いにとって心地よい行為を築き上げていく話し合いが必要とされる。

夫婦関係に行き詰まってしまった場合、多くの人は「対話」と称してここにジャンプしようとする。

浮気は過去のことだから許して欲しい。僕らは前を向くべきだ。反省していると言っているじゃないか。セックスの頻度を話し合いで決めよう。

だが、それでうまくいったことがあるだろうか?きっといい結果は生まなかったはずだ。分かり合えない辛さだけが降り積もり、大雪の中で相手の姿を見失うように二人の距離は確認できないほど離れてしまったはずだ。

過去の浮気や産後クライシスは確かに過去のものではあるが、いまだにフラッシュバックにさいなまれ、それは「過去」ではなく「現在進行中」の傷として、「された側」を永遠に傷つけ続ける。まるで止まない吹雪の中、一人取り残されたかのように。

心理的安全性が存在しないなかでの「セックス頻度」の提案は、まるで1日に何人の客なら相手ができるかと問われる売春婦のような屈辱感を相手に与える。感情のある人間としてではなく、セックスマネキンのように扱われる虚しさ。

なぜ、こういったことが起こるのか?それは第一から第三の会話で築くべき「信頼感」がまだ存在していないからだ。信頼感は夫婦関係における基礎だ。家を建てるためには基礎固めをしなければならず、それを怠ると家が傾いたり崩壊する恐れがある。夫婦喧嘩によって夫婦の絆が破壊されるのは、ちょっとした震度の地震でも崩壊するほど二人の絆の耐震設計が貧弱だからだ。

EFTは「接近・応答・関与」が基本となっているが、応答のためには接近が必要であり、まず接近ができるようになる必要がある。

接近とは、パートナーに対して疑いや不安があっても、心を開け続けることを意味する。また怒りなどネガティブな感情に振り回されないよう努力することも意味する。そうすれば、夫婦間の断絶を防ぐことができ、パートナーからかろうじて走っている小さな愛着の信号をキャッチすることができるようになるからだ
https://atsu.theletter.jp/posts/ffd94760-f802-11ee-a0ca-d3e29f743767

接近におけるポイントはこの二つ。パートナーに疑いや不安があっても心を開き続けること、そして怒りなどのネガティブ感情に振り回されないよう努力すること

EFTを夫婦生活に取り入れるには、この二つをまず押さえる必要がある。今回はこの二つにフォーカスを当てて話をしたい。

②絵画鑑賞は5メートル離れること。

二人に信頼感がなければ、疑いや不安を乗り越えてパートナーに心を開き続けることは難しい。では信頼感を築くためにはどうすればいいのか?

それが紹介した「第一の会話:悪魔の対話」だ。自分たちの関係性が悪いループにハマっていること。お互いを責め立て、勝者の存在しない地獄へと共に落ちていることに気がつくこと。お互いが悪いのではなく、二人が「お互いにとって大切であるべきはず」と思っているからこそ陥っているトラップ自体が悪者であることに気がつくことだ。

悪いのはあなたでも、あなたのパートナーでもない。あなた達二人を吹き飛ばそうとしているネガティブループ自体が敵なのだ。ただ実際の行動には抵抗を感じるだろう。そこで、ループから抜け出すためのコツと会話例を紹介しよう。

ネガティブループから抜け出すためのコツ。それはパートナーと自分から物理的な距離を取ることだ。物理的距離が心理的距離を生み出し、自分の感情をメタ認知する余白を設けられるようになる。

どういうことか?つまり、喧嘩になると感情が高ぶってしまい短いターンでの応酬となる。ろくに考えずに言葉を発するため相手を苛立たせ、怒りの感情に塗りつぶされ、本心が全く見えなくなる。

1cmの距離で絵画を見つめても絵全体が見えず、作者の意図なんてもちろんつかめない。筆使いの荒さばかりが目につくだけだ。だが、絵画から5m離れて鑑賞すると、見えていなかった作者の技法が目に飛び込んでくる。荒いと思っていたタッチは全体の美しさのバランス調整のためであり、色が濃いと思っていた箇所は陰影のためだったと理解できる。

夫婦喧嘩も同じで、ネガティブな感情の距離が近づきすぎている(ヒートアップし過ぎている)と感じたら、物理的な距離を置いてみよう。以前、うちの妻はよく30分から1時間家出をし、外で頭を冷やすことが多かった。残された僕も頭を冷やし、なぜ自分はあんなことを言ってしまったのか、本当はどうしたかったのか、どうされたかったのか気がつけるようになった。

その際は「どうすべきだったのか」ではなく、「どう感じたのか?」「自分の行動を引き起こした感情はなんだったのか?」など感情面にフォーカスを当ててみよう。

③感情への寄り添いと解決方法の提示は別に実施する

夫婦が課題や葛藤を解決しようとする時、つい第四以降の会話に飛びつきやすいわけだが、これは第四以降の会話が具体的な「解決方法」であるためだ。

自分が恐れていることとどうして欲しいかを伝える第四の会話「私をギュッと抱きしめて」、傷つけられたことを許し、傷つけた側は後悔と反省を伝える第五の会話「傷つけられたことを許す」、そして体と心が共鳴し合う真のセックスを目指す第六の会話「身体接触による絆」、学んだ愛の会話を継続させる第七の会話「愛を持続させる」。

これらは極めて実践的かつ具体的な内容だ。多くのパートナーシップ本にこれらは書いてあり、これを実行することを推奨させる。だが多くの人の悩みは解決されず、同じテーマの本を買い続けることになる。

なぜか?

それは、パートナーに対する「感情への寄り添い」と、「解決方法の提示」を同時に行なっているからだ。家事育児の分担、夫婦二人の時間のアポ取り、セックス頻度の取り決め、これらを話すなかで感情への寄り添いも並行させようとする。なぜなら、夫婦関係改善には「共感」が重要であるとあらゆるコンテンツで言われているからだ。そして、僕ら男性は特に問題を早く解決したいため「解決方法の提示」をすぐにしてしまう。

「謝っているじゃないか。分担すると言っているじゃないか。もう過去には戻れないんだから、これからどうするかだろ?」

あなたもそう思うかもしれない。でも違うのだ。「感情への寄り添い」がされていない状態で「解決方法を提示」されてもまったく心に刺さらない。思いやりを向けられているとは感じないのだ。

「感情への寄り添い」が効果を発揮することで、やっと「解決方法の提示」を受け入れる準備が整うのだ。解決方法がすぐに頭に浮かんでどうするか言いたくなってしまうだろうが、妻の感情に寄り添い、妻があなたの寄り添いを感じられるようになってから、解決方法は提示するようにしよう。

④パートナーに心を開き続けるためには、自分の感情の深堀りが必要

夫婦関係に悩む方の相談に乗っていると、僕の役割が「思考の整理役」であると感じることが多い。ショッキングな出来事が起こり、パニックになり、本音とこうあるべきという姿がごちゃ混ぜになり、この事態をどう捉えればいいのか、どうすればいいのか、さっぱりわからなくなり混乱状態となる。

そんな時に、自分に起こった出来事を自分の口で話すことで、出来事が整理され、自分がそこにどういう物語を与えていたのか、本当はどう感じていたのか、本当はどうしたかったのかが見えてくる。

僕は相談者さんに何度も質問する。「そう感じるのはなぜですか?」「なぜそうしたんですか?」「その時どう感じたんですか?」と。時には僕がパートナー役となったロールプレイングを行い、相談者のパートナーとして質問をすることで、さらに感情を深掘りしていく。

すると、自分にはなかった視点や感覚を得られるようになる。誰かと話すことは新しい視点を取り入れることだからだ。

パートナーに心を開き続けるためには、まず自分の感情を知る必要がある。そして、それを知ることは案外難しい。ノートに書き出したり、誰かとおしゃべりしたり、カウンセラーに相談したり、いくつもの方法を使って、感情を深掘りするトレーニングをして欲しい。

僕の場合、簡単なマインドフルネスを使っている。静かな公園をブラブラと散歩し、何も考えず、ただ自分の心に浮かぶ感情を眺める。焦り、嫉妬、憤り、悲しみ、孤独、喜び、様々な感情が泡のように浮かび、ただそれを大切に扱うのだ。そこにいい悪いのジャッジはせず、こうあるべきというしがらみに縛られず、自分への思いやりで満たしながら、それらを見つめるのだ。すると、自分の柔らかな気持ちに触れることができる。

人によって向いている方法はいくつかあると思う。以前、僕は禅寺での坐禅も試してみた。宗教的なおごそかな雰囲気が心を洗ってくれるような爽快感があった。友人はYoutubeのマインドフルネス動画を使って瞑想を習慣化している。習慣化のためには日常で簡単にできるものがいいと思う。ぜひ、自分に合ったやり方を試して欲しい。

⑤パートナーに心を開き続けるためには、受け止められないことでどう感じるかを伝える

「それがどうしたの?」「いまさらそんなこと言われても」

パートナーに素直な気持ちを伝えても、そう言われてしまったことがあるかもしれない。時には不機嫌そうにされたり、怒りをぶつけられたり。

それは、あなたのパートナーが自分が持っている「あなたに対する影響力」の強さを知らないからだ。僕もこのパワーの強さに気がついたのはここ数年だ。僕がたいしたことないと思うような言動でも、妻を大きく傷つけることがある。距離が近すぎるほど僕らは遠慮しなくなり、「これくらい夫婦なんだからわかってよ」と相手に無遠慮さを許容するよう暗に求めたりする。

だけど違うんだ。夫婦というのは「お互いに大切であるべき存在」と心の底では思っているため、ちょっとした言動で大きく傷つくようにできている。これは霊長類の特徴であり、僕らは大切な存在から傷つけられた時に怒りを感じるようにできている。自分の命を守るための生存本能だ。

それを裏つけるデータが理化学研究所の調査にあった。人に近い小型のサルを使った実験により、他のサルと対面した際に攻撃性・不安・友好性のいずれかの反応を示すことがわかった。脳内セロトニン神経の活性レベルを調べた結果、これらの社会的行動をとる際に大脳皮質内側面(自己に関する記憶や感情の処理・形成を担い、社会性行動において重要な役割を担っている部位)が関わっていることが発見されたのだ。

神経伝達物質の1つであるセロトニンは、怒り、不安、信頼感といった感情行動に作用するため、セロトニンを分泌する神経細胞(セロトニン神経)の働きの違いがヒトの性格(個性)に関連し、ヒトの社会的な行動(協調性や寛大さなど)にも関与するとされています。
https://www.riken.jp/press/2012/20120718/index.html#note3

ちょっと話はずれるが、セロトニンが分泌されないと信頼や友好が生まれないとも言えるわけで、寝不足状態(産後まもなくや長時間労働など)を放置しておくと夫婦関係に悪い影響が出そうだ。

朝日を浴びる、適度に体を動かす、バランスの取れた食事を心がけるなど、日常生活に少し工夫を加えることで、セロトニンの分泌を促進できるので意識した方がいいかもしれない。

話を戻して、素直な気持ちをパートナーに伝えても拒否されてしまった場合、どうすればいいのか?その時に自分がどう感じるかを伝えるのが効果的だ。怒るのではなく。

きっとあなたのパートナーは戸惑うはずだ。どうしていいか分からず途方に暮れるかもしれない。でも、あなたが求めているものはなんだろう?ただ、私の気持ちを受け止めて欲しい。私がそう感じているということを、ただあなたに知って欲しい。そういった純粋な思いではないだろうか?

もちろん、ああして欲しい、こう変わって欲しいという願いはあると思う。だけど、怒りによるネガティブループが巻き起こる現状では、まずは自分の気持ちをわかってほしいという思いが重要課題であるはずだ。

だから、こう伝えてみよう。

あなたが私の気持ちを受け止めてもらえないことがとてつもなく悲しい。

私にとってあなたはとても大切な存在だから。

この世界でもっとも大切な存在であるあなたからそう言われると、心が粉々に砕け散り、生きていく望みを失いそうになる。

あなたが私のことを理解してくれている。

そう思うだけで生きている気がするの。

私にとって大切なあなたが私のことをわかってくれている。

あなたと私は違う考え方を持っているけど、だけど、それでも、あなたが私のことをわかってくれている。

その事実が私に生きていく安心感と勇気を与えるの。

これは一例だ。あなたの心の中にある思いをパートナーに伝えてみよう。

おまけ:セルフコンパッションでネガティブな感情を消し去る

ネガティブ感情に振り回されないためには、パートナーから物理的に距離を取り、自分をメタ認知することが重要だが、他にも方法がある。それがセルフコンパッションだ。

コンパッションとは慈悲や思いやりと訳され、セルフコンパッションとは自分に向けた思いやりのこと。東京成徳大学大学院 准教授 石村郁夫先生へのインタビューを聴いていただけるとわかりやすい。

誰かに対する怒りが渦巻いている時、なんて声をかけてもらえるとあなたの気持ちは落ち着きますか?

君の気持ちはよくわかるよ。

そう思ってしまうのも仕方ないよ。

君は君で頑張ってるもんね。

君がすごく大変な思いをしていることは、僕が一番よく知っているよ。

そう言われたら気持ちが落ち着きますよね。でも、なかなかそんな都合のいいことを言ってくれる慈悲深い人はいません。だから、自分で自分に向かって言うんです。

慈悲深い友人が自分に向けて手紙を書いてくれたと想定して書くコンパッションレター、慈悲深い他者を想像して会話をする慈悲深い他者など、いくつか方法はあるが、僕はネガティブ感情が生まれたら、散歩しながら自分で自分に向かって優しく語りかけるようにしている。自分が自分のベストフレンドになるイメージだ。

また、恨みを感じている相手に向かって、「○○さんが幸せでありますように」と祈りを捧げるコンパッションビームもよくやっている。仕事でイライラしてしまった時には、その人の幸せを心の中で祈ると、不思議なことにむかついていた気持ちが自然と小さくなっていく。

コンパッションとアンガーマネージメントは相性がいいので、下リンク先の本などを参考に日常生活に取り入れてほしい。

コンパッション・フォーカスト・セラピーに基づいたアンガーマネジメント: 真の強さを育てるために

今回は以上です。回復率70%を誇る脅威のカップルセラピー EFTを実生活に取り入れるためにできることをご紹介しました。少しでも参考になれば幸いです。

ちなみにスー・ジョンソンが開発したEFTは、エモーショナリー・フォーキャスト・セラピーが正しい表現だそうです。ずっと夫婦関係学ラジオではエモーショナル・フォーキャスト・セラピーと紹介していましたが、それは別の流派の療法だそうです。失礼しました。

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では、また来週お会いしましょう!よい週末を!

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