あなたは妻を家政婦として見ていないか?ハウスキーパーワイフ現象から抜け出す五つのステップ。

妻との関係に悩む男性はこう言う。「妻を家政婦のように見ていたのかもしれない」

夫との関係に悩む女性はこう言う。「私はまるで透明人間のよう」

愛し合っていたはずの二人はなぜすれ違うのか?

そこには無意識に陥ってしまう罠が隠されていた。産後の夫婦が陥るトラップを理解すれば、今からでも関係性を立て直せるはず。
アツ@夫婦関係学ラジオ 2024.02.09
誰でも

「こんなこと言うのは情けないんですが、ぼくは妻は一人の人間として見ていなかったのかもしれません……」

妻との関係に悩む男性の多くは僕にそう告白した。不甲斐ない自分を認めたくないが、それが全ての出発点であったことを彼らは理解していたのだ。

「私はまるで透明人間のようでした。いてもいなくても同じ。あの人に私の姿を見えていないんです……」

夫との関係に悩む多くの女性はそう語った。寂しさと失望感が身体中に広がり、冷たい雨が降りしきる暗闇の中で立ち尽くしているかのようだった。

あなたは自分の妻を心から大切にしているだろうか?病める時も健やかなる時も、大切にしてきたと声を大にして言えるだろうか。

僕にはその自信がない。もちろん、可能な限り大切にしてきたつもりだ。だけど、自分が仕事で忙殺され、妻が家事育児に翻弄されていた頃(あれは上の子が3歳になるまでだった)、僕は妻が家のことをするのが当たり前だと感じていたのだと思う。それが妻には透けて見えていたからこそ、僕らの関係はこじれてしまったのだろう。

男も女も働きながら子供を一緒に育てる、そんな新しい時代を僕らは生きている。ロールモデルがいないこの世界で僕らは戸惑ってばかりだ。迷いながら、ぶつかり合いながら、幾つもの葛藤を乗り越えることで、僕らはやっと夫婦になれる。

「妻を家政婦として見る」現象は、子供が産まれた家庭ならどこでも起こり得る。夫婦の絆を引き裂くこの現象はなぜ起こるのか?どうすればいいのか?考えてみたいと思う。

原家族からの影響が及ぼすもの

妻の家政婦視現象、わかりにくいので「ハウスキーパーワイフ現象」と呼びます。この現象は「原家族からの影響」「産後の”新”性別役割分担」が原因じゃないかと僕は考えています。

まず、原家族の影響からみていきましょう。原家族とは「自分が生まれ育った家庭」のこと。多くの人は原家族から性別役割分担の影響を強く受けます。これはスタンフォード大学心理学部教授であり、アメリカ心理学会会長を務めたアルバート・バンデューラの社会学習理論として知られています。

https://www.explorepsychology.com/albert-bandura/

https://www.explorepsychology.com/albert-bandura/

社会学習理論によると、人は社会的環境や他者の行動を観察し模倣することで、新しい行動や態度や感情を学習し、その新しい行動は報酬と罰によって強化されていくと言われています。

例えば、幼少期に父親が家事育児をせず、母親が家事の全てを担当していた場合、両親の行動を観察と模倣し、結婚後も同じような家庭を再生産しやすくなります。また、少し話はずれますが、感情表現(寂しい、辛いなど)を家庭で禁じられていた場合、その罰によって非情緒的コミュニケーションが強化されがちです。「夫が感情表現が苦手です」とお悩みをいただくことがありますが、これが原因じゃないかなと思っています。

ここでのポイントは、多くの人は原家族からの影響を意識できておらず、自身のアイデンティティと密接に結びついているため認めたがらないことです。そのため、パートナーから考えを否定されると、自分達の家庭にそぐわない内容であっても怒りの感情を表現します。アイデンティティへの脅威が脳の脅威システムをオンにさせ、瞬間湯沸かし機のように「闘争・逃走」の本能を目覚めさせるからです。

The fight, flight, or freeze response enables a person to cope with perceived threats. It activates the ANS, which causes involuntary changes such as an increased heart rate, rapid breathing, and muscle tension. People in fight or flight tend to take action to avoid or confront danger, while those in “freeze” become immobile. Fawning or flopping can also be part of the stress response. There is no right or wrong way to behave during the fight, flight, or freeze response. 
https://www.medicalnewstoday.com/articles/fight-flight-or-freeze-response

闘争・逃走・凍りつき反応は、知覚された脅威に対処するためのものである。これはANSを活性化させ、心拍数の増加、呼吸の速さ、筋肉の緊張といった不随意的な変化を引き起こす。闘争や逃走の状態にある人は、危険を回避したり立ち向かったりするために行動を起こす傾向があるが、「凍りつき」の状態にある人は動けなくなる。媚びたり、はしゃいだりするのもストレス反応の一部である。闘争・逃走・凍りつき反応時の行動には、どちらが正しいということはありません。
https://www.medicalnewstoday.com/articles/fight-flight-or-freeze-response

人は育った家庭環境でアイデンティティを構築しますが、家族内での役割(父親の仕事は◯◯、母親の仕事は◯◯など)への概念もそこで生まれます。なぜなら、家庭は一人だけで成り立っておらず、それぞれが「家族という複雑な機械」を動かすための部品として機能しているからです。家族はお互いに影響を与え合う一部であり、相互依存の状態にあるのです。

これはジョージタウン大学精神医学部教授であったマレー・ボーエンが提唱した家族システム理論として知られています。

ボーエン家族システム論は、家族を一個の「システム」と見る家族論です。1個のシステムとして見るということは、「1つの独立した機械的な組織」として見ることともいえるかもしれません。つまり、家族を形成するメンバーのそれぞれが、機械の部品のように役割を持ち、互いに無意識のうちにもバランスをとりあいながら、1個の家族として機能しながら存在しているということです。このシステム論的視点のフォーカスとなるのは、家族における感情的要素です。つまり、家族を1つの独立した「感情の単位」としてみることで、家族というものが、感情をベースとしたそれぞれのメンバーの微妙な力関係によって成り立っていると説いています。たとえば、ひとりのメンバーに身体的、また精神的な病気などが生じた場合、他の家族メンバーが自ずから反射的に欠けた部分を補い、感情のバランスを安定させようとします。具体的な例をあげると、アルコール依存症の父を持つ家庭の妻と子供達は、アルコールに依存することで欠けてしまう父親の役割を微妙に穴埋めしてゆくようになり、家族という1つの感情システムのバランスをそれなりに安定させようします。
https://www.eastsidecounselling.com.au/therapy/bowen.html

一般的に家父長制傾向の高い家庭はネガティブな印象で見られがちですが、彼らは家族を機能させるための役割をそれぞれに演じているとも言えます。父親の労働時間が長く家庭外にいる時間が長くなると、子供や祖父母のケアを母親が担うようになる(担わざるを得なくなるとも言える)。もし、父親が家庭内に費やす時間が長くなれば、今度は母親が家庭外の時間を費やすようになる(費やせるようになる)。

夫が経済的援助者(稼ぐ人)、妻が情緒的援助者(家族をケアする人)という役割は固定化されているように見えて、実は家族内のシステムの変更にともない、水のように形を変えることができる。ですが、家族内システムが変わっても長くその役割を固定化させ続けると、水はよどみ汚れていきます。妻が家族をケアする「ケアラー」として機能するには、人手が足りなすぎるからです。

2019年の三世帯割合は9.4%ですが、現在40代の方が幼少期を送った80年代後半から90年代では30~45%でした。1980年に限ると日本の半分の世帯が三世帯でした。かなりの変化ですよね。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/html/zenbun/s1_1_3.html

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/html/zenbun/s1_1_3.html

妻と母親(or 義母)の二人ならば、夫や祖父や子供達のケアもできたかもしれない。さらに当時は地域コミュニティが機能していたので、ご近所さんでの助け合いもあったはず。実際、僕の母は実の親からネグレクト状態で育てられましたが、近所の女性達のおかげで生活ができていました。

データを見ると、人口が減り続けているにも関わらず、精神疾患患者数は増え続け、特に気分障害(躁うつ病など)患者数は10年間で2倍になっています。

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf

年代別に見ると、75歳以上のゾーンを除くと45~54歳がもっとも患者数が多いのです。家庭内の負担が重くのしかかる年代です。35~44歳も3番目に患者数が多いゾーンです。

https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r05hakusho/zenbun/siryo_01.html

https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r05hakusho/zenbun/siryo_01.html

また、生活充実度のためには困った時に助けてくれる身近な人の存在が欠かせませんが、30代〜50代では、およそ8割以上の人が「手助けや支援を必要としている人が近所に住んでいるのか知らない」と答えています。

https://www.ipss.go.jp/ss-seikatsu/j/2022/SSPL2022_gaiyo/SSPL2022_gaiyo04.pdf

https://www.ipss.go.jp/ss-seikatsu/j/2022/SSPL2022_gaiyo/SSPL2022_gaiyo04.pdf

下の図の通り18歳未満の子供がいる世代は35〜49歳がボリュームゾーンですから、孤独な子育てと精神疾患に相関関係はあるのではないかと思うのです。

https://www.ipss.go.jp/ss-seikatsu/j/2022/SSPL2022_gaiyo/SSPL2022_gaiyo08.pdf

https://www.ipss.go.jp/ss-seikatsu/j/2022/SSPL2022_gaiyo/SSPL2022_gaiyo08.pdf

上の図(18歳未満の子供がいる年代)と、下の図(年代別の気分障害患者数)はほぼ重なることからも、そう推測できます。

まとめると、原家族の影響(80〜90年代に子育てを受けた。家族が家父長制傾向が高かった等)を強く受けて育つことで、「父親=外、母親=内」といった役割概念を無意識のうちに観察・模倣・モデリングすることで、自身のアイデンティティーと一体化させていった。その結果として、ハウスキーパーワイフ現象が起こっている。

現代の孤独な育児による母親の精神疾患増加は、夫にとっては自身のアイデンティティに反する現象であるため認めがたく、また解決方法を現家族から学んでいないためどうすればいいかわからず、ただ戸惑い続けているのではないかと思われます。

次に、「産後の”新”性別役割分担」についてみていきましょう。

産後の”新”性別役割分担

家事も育児も仕事も、夫婦で一緒にがんばっていこう。夫が仕事、妻が家事育児なんて古い価値観だ。若い人ほどそういった価値観に変わりつつあります。

子供がいる40~69歳の男性のうち、仕事時間を減らしたいと考えている割合は25.7%ですが、20~39歳では34.1%まで増えます。また、家事育児時間を増やしたいと考えている40~69歳男性はわずか14.3%ですが、20~39歳では27.7%にまで増えます。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

しかし、そんな新しい価値観を持った夫婦でも、人生の駒が進むにつれてそうも言っていられなくなります。

妊娠後期には女性は仕事を休まざるを得なくなります。出産すれば2ヶ月間の産褥期(体が元に戻る期間、じっくり体を休める必要がある、別名:産後の床上げ)が必要であり、1年間の育休明けにやっと仕事復帰ができます。

ですが、子供が発熱すれば保育園にお迎えに行かねばならず、病院に連れて行き、熱が下がらなければ仕事を休んで看病しなければいけません。病児保育可能な施設が近くにあれば仕事にもいけますが、まだ一般的とは言えない状況ですよね。

妻一人で背負わずに夫も発熱時にお迎えや通院や看病をすればいいじゃないか、二人でやれば大変じゃないでしょと思うかもしれません。確かにそうです。分担がうまくいけばそれでいいと思います。ですが、ぼくもそうでしたが現実的にはそう簡単ではないのです。

限りある有給は使い切り、看護休暇(無給)を使わざるを得ず、それすらも減っていく。仕事を早く切り上げなければならず、重要なプロジェクトには参加できず、宿泊をともなう出張にも行けない。そんな状態では成果を出すことができず、出世は遅れていきます。出世が遅れれば収入は上がらず、下手すれば下がる可能性だってあります。

ここで初めて二人はジレンマにぶつかるのです。夫婦で協力し合って育児を乗り越えたいが、そうすると収入が増えず、この先に不安だけが募る。ならば、夫の収入を上げさせて自分は育児に集中した方がいいのかもしれない。次第に妻はそう感じるようになっていく。子供を抱きしめたり授乳するたびに分泌されるオキシトシンが母子間の絆を強め、その効果も相まって妻はそう感じるようになります。

実際、6歳未満の子供がいる共働き夫婦の育児・家事・仕事バランスを見ると、家事は妻に仕事は夫にかたよっています。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

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時代の変化とともに共働き家庭の妻の家事時間が減っているとはいえ、いまだに家事関連時間の77.4%を妻が担っているのが現状です。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

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男性育休取得率は年々上がっていはいますが、取得日数に注目すると5日〜2週間未満がもっとも多く、1日〜2週間が全体の半数を占めます。僕も最初の出産時には5日しか育休を取らず、帝王切開した妻が退院する頃に育休が終わったため、「なんちゃって育休」なんて妻に揶揄されました。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

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出産後、夫が稼ぎ、妻が家事育児を担う。この選択は二つの葛藤を生みます。一つは「”新”性別役割分担の重み」です。夫がメインの稼ぎ手となることを戦略的に選択した。ただし、夫が家事育児をまったくやらなくていいわけじゃない。働きながらも家庭参画することが条件となるケースが多いです。となると、”新”性別役割分担は次のようになります。

夫=収入+家事育児

妻=家事育児

もちろん妻側の家事育児分担率の方が高いので、厳密にはこの方式の通りではありませんが、その分担比率が家庭内で異なるとはいえ、要素としてはこうなるはず。もし、妻が家事育児を平等に分担することを望んだら、夫には経済的援助者として役割もあるため過酷な日常が訪れる。さらに、夫が感情の言語化が下手で、令和のパートナーシップイメージに縛られている場合、その過酷さを妻にうまく伝えられず、夫婦間の見えざる葛藤はますます膨らんでいきます。

もう一つの葛藤は「妻のアイデンティティー喪失」です。人のアイデンティティーは仕事と結びついていることが多く、退職し育児に専念するなかで無力感を感じ始める女性が多いのです。

「私の価値とは一体何だろうか?」

「私に価値があるのだろうか?」

社会とのつながり(職場)が切れたことで自己効力感を失い、失われたアイデンティティー構築を目指し、ポジティブな行動を取る人もいれば、ネガティブな行動を取る人もいます。ポジティブなものは趣味の発掘や勉強など、ネガティブなものは婚外恋愛や夫に対する嫌悪感です。

このようにして、「原家族からの影響」と「”新”性別役割分担の呪い」の二つの理由から、夫婦はお互いにラベルを貼るようになります。「経済的援助者」と「情緒的援助者」です。このラベリングが行き過ぎると、経済的援助者はATMに、情緒的援助者は家政婦となり、ハウスキーパーワイフ現象が起こるのです。

これはノースウエスタン大学社会学部教授であったハワード・ベッカーが提唱したラベリング理論として知られています。

https://www.nytimes.com/2023/08/21/books/howard-s-becker-dead.html

https://www.nytimes.com/2023/08/21/books/howard-s-becker-dead.html

ラベリング理論とは、ラベルを貼られた人は、そのラベルの元にアイデンティティーと行動パターンを形成するという理論です。例えば、妻が夫をATMとして扱うと夫はますます経済的援助者として振る舞うようになり、家庭をケアしなくなります。そして、夫が妻を家政婦として(無意識であっても)扱うと、妻はますます家政婦としてのアイデンティティーを形成し、葛藤を抱えるようになっていきます。

少し話はずれますが、夫婦間の平等な家事分担の弊害もここにあります。これは私の仕事、これはあなたの仕事とラベル貼りすることで、本来の目的(幸せな家庭を作るなど)を忘れてしまうのです。家族全員が幸せを感じながら暮らすための家事分担が、お互いをいがみ合うための道具に成り下がってしまうのです。

このようにして、原家族の影響と”新”性別役割分担の結果、僕らは知らず知らずのうちにお互いにラベリングをし、その認識を無意識に増大させていきます。

では、一体どうすればいいのか?救いはあるのか?

あります。それが「脱ハウスキーパー現象5ステップ」です。この五つのステップを踏むと、ハウスキーパー現象から逃れることができるようになります。

まず一つ目、妻をどう「定義」しているのか明確にするのです。

以前、グロービス経営大学大学院で単科生(院生ではなく一般人として授業を受講)としてクリティカルシンキングを学んだことがあり、そこで何度も「定義」「前提条件」を意識するようにと注意されました。

課題が発生した時、その課題をどう定義づけしているのか?そして、その課題の前提条件はなにか?まずここをはっきりさせないと、課題の本質を見誤り解決することができなくなります。企業内で発生する課題の多くはこの二つを見落としているケースが多いですよね。

受講費用はかなり高かったのですが、クリティカルシンキングは本当に受講して良かったと心から思います。マーケティングと経営戦略も受講しましたが、費用対効果が高かったのはクリティカルシンキングでした。仕事だけでなくプライベートの課題も解決しやすくなりました。

話を戻すと、自分が妻をどう「定義」しているのか、素直な気持ちで考えてみましょう。愛おしい女性?大切な人? もし本当にそう感じているなら妻から嫌われることはなかったはず。心の奥底ではどう感じているのか本音をすくいあげてみましょう。

恥ずかしさ、情けなさ、無力感を感じるかもしれない。だけど、自分が妻を家政婦や部下のように扱っていたことに気がつけた男性は強い。自分のもろく柔らかな気持ちに触れることができるからです。

次に、その定義はどのようにして作られたのか考えてみよう。これは『「燃えやすさ理論」から考える最適な夫婦コミュニケーションとは』で触れた「燃料(自分を形作っているもの)」を意識するとわかりやすいです。

生育環境、両親からの愛情の形、教育歴、過去の恋愛からの学習など、自分を形作ってきたものを紙に書き出してみましょう。

もしかしたら父親がずっと家にいなかったかもしれない。もしかしたら女性経験が少なくて付き合い方がわからなかったかもしれない。もしかしたら、末っ子だったので家族全員からケアされ、自分がケアする機会が少なかったかもしれない。

書き出してみると自分がどのように育ってきたのか、なぜ今の思考を手に入れたのかが理解できるようになるはず。紙いっぱいに箇条書きでもいいから書けるだけ書いてみましょう。

そうしたら、初めに書いた妻に対する「定義」と照らし合わせてみましょう。妻への定義がなぜ作られたのか、自分で理解できるはずです。妻を家政婦として見るようになった背景にはあなたにはどうしようもなかったこともあるかもしれません。幼い子供は生育環境を自分で選ぶことはできませんから。

ですが、原因に責任はなくとも、行為には責任があります。妻を家政婦として扱ってきた「行為」には。では、それを踏まえて三つ目に移りましょう。三つめは「妻とどういった関係を築きたいのかを書き出してみる」です。

お互いを大切にし合う関係?愛し愛されている実感を感じられる関係?思いやりを与え合える関係?それは現状とは離れたものかもしれない。でも、あなたの心に妻を大切にしたいと思う気持ちがあるのなら、それを素直に書き出してみましょう。妻が受け止めてくれないと抵抗を感じるかもしれませんが、いいんです。あなたの望みを書くのですから。

四つ目は「ありたい関係性を妻と共有する」です。例えば、こんな風に。

俺は今まで君を大切に扱ってこなかったと思うんだ。そばにいるのが当たり前だと思っていたし、家のことも子どものこともやってくれるのが当たり前だと思ってた。結婚して子供が生まれ、君のことを女性として尊重することを怠っていた。俺の実家ではそれが日常でその影響を受けていたのかもしれない。でも、親は親で俺たちは俺たちだ。俺は君と一緒に「お互いを大切にし合う関係」を作りたい。時間はかかるだろうけど、やれるだけのことはやるつもりなんだ。今までのこと、申し訳なかった。

自分の柔らかな気持ちにアクセスすることに抵抗がある人もいるはず。ぼくもそうです。素直な気持ちを妻に伝えようとするたびに恐怖心を感じ、涙が流れてきます。弱さをさらすことにぼくら人類は本能的な恐怖を感じているのかもしれません。また、関係性が悪ければ(否定されるんじゃないか)という恐怖も感じますよね。

妻に素直で柔らかな気持ちを伝えたらファイナルステージです。それが「対話」です。これからどうするか?家事育児をどうするか?お互いへのケアをどうするか?どうして欲しいか?それらを話し合うんです。多くの夫婦はいきなり対話に入りがちですが、信頼関係という橋がかかっていなければ対話という川を渡ることはできません。

対話の結果、自分たちだけのオリジナルの役割を手に入れることができるはず。それはきっと、生育環境や産後の”新”性別役割分担とはまったく異なるものであるはずです。その新しいラベルは二人が納得して選んだものですから、アイデンティティーの喪失も相手に対する失望感も生まれないはず。

これら五つの流れを最後にまとめますね。

一つ目、自分は妻をどう「定義」づけているか明確にする

二つ目、なぜそう定義づけしているか書き出す

三つ目、これからどうしたいのかを書き出す

四つ目、妻に柔らかな気持ちと決意を伝える

五つ目、対話をする

ハウスキーパーワイフ現象から抜け出すには、自分が本当はどう感じているのかを正しく把握することが大切です。認めたくない情けない思いもそこにはあるかもしれません。妻や子供より、自分の自己実現を優先しているかもしれません。

ですが、そんなかっこ悪い自分と真正面から向き合い、本当はどうしたいのか?そのためにどうしたらいいのか?そこを自問できる男はカッコいいと僕は思っています。自分の至らなさを受け止め、他者の苦しみを取りのぞこうとする、慈愛に満ちたその行動こそが大人の条件であり、妻から愛される夫の条件だからです。

令和の新しいパートナーシップは始まったばかり。そこには制度や勤務環境の問題がいくつも存在し、まだまだ現実が理想に追いつく様子はありません。僕ら夫婦も格闘の毎日です。ですが、新しいパートナシップを作り上げるには制度が追いつくのを待っているわけにいきませんし、何よりも大切なことは、環境整備ではなく、自分たち夫婦がお互いに素直な気持ちを傷つくことなく共有できることです。

パートナーシップにおいて最も弊害となるのは「感情の取り扱い」です。これさえクリアできれば、二人の夜は明け、雨は上がり、空にかかる虹のように夫婦の絆を作りやすくなるはず。あなたたち夫婦の関係が良い方向にいくことを祈っています。

過去記事は下リンクから読めます。よろしければご興味ある記事をお読みください。

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