「燃えやすさ理論」から考える最適な夫婦コミュニケーションとは?
夫婦喧嘩が絶えませんか?
それとも、冷静過ぎて物足りないと感じていますか?
なぜ、自分たちはこうなのか、どうすればここから抜け出せるのか。
そんなことを考えたことはないでしょうか?
もし、そうならばこの理論の理解がきっと役立つはずです。
イギリスの臨床心理士、ミカエラ・トーマス博士が提唱した「Flammability(燃えやすさ)理論」が。
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燃えやすいカップル、冷静すぎるカップル
燃えやすさ理論とは、夫婦二人の関係性の「温度」に着目した理論であり、その温度が高すぎたり低すぎると関係性が壊れてしまうというものです。
いつも激しい夫婦喧嘩ばかりで心が通い合っている気がしない。
もしくは、二人の間にときめきが少なく温かな絆を感じることができない。
あなたはどちらのタイプですか?
どちらかにはっきりと分かれてない方もいると思いますが、傾向としていずれかに偏っているんじゃないかなと思います。
ぼくら夫婦は以前は燃えやすい方だったかなと思います。今では、その中間くらいになった気がしています。
それぞれのタイプを細かく見てみましょう。
燃えやすいカップルとはこのような関係性を指しています。
感情的になりやすく、激しい喧嘩が多く、意見の合わない議論を繰り広げますが、情熱的で喜びに溢れている場合もある。
一方、冷静すぎるカップルにはこのような特徴があります。
ときめきや感情の起伏が少なく、ばらばらになりがちだが、日時の生活をうまくこなすことができ、よい決断をし、チームとしてうまく機能することもある。
以前、家事シェア研究家の三木智有さんのポッドキャスト「家族をアンラーンする!〜家族OSをスクラップアンドビルドする1?」にゲスト出演させていただいた際、三木さんが恋愛や愛着といった感情を強く抱く夫婦の関係性を「感情ドリブン」、逆にビジネスライクに近い関係性を「関係ドリブン」と表現されていました。
燃えやすいカップルは感情ドリブン、冷静すぎるカップルは関係ドリブンとも言えるかもしれません。
どちらがいい悪いという話ではなく、それぞれの特徴が高まり過ぎてしまうと、関係性が壊れやすくなってしまうのです。
例えば、燃えやすいカップルはお互いに妥協しない傾向があるため、自分たちの意見を相手にぶつけ続け、風が吹けば吹き飛んでしまう炭になるまで、二人の関係性を燃やし続けます。
冷静すぎるカップルは自分の感情をコントロールし過ぎる癖があるので、相手に意見を伝えられなかったり、性的欲望がお互いに少なかったりと、溶けることのない永久凍土のように関係性が冷え切ってしまうことがあります。
自分たちの関係性は燃えやすいのか?それとも冷えやすいのか?
それを知り、関係性の火加減を調整することができれば、望みの関係性へと変化させられる可能性があります。
次に、「関係性の燃えやすさ」がどういう構造になっているのか見ていきましょう。
関係性の燃えやすさピラミッド
ミカエラ・トーマス博士は著書「The Lasting Connection」の中で、「関係性の燃えやすさ」を次のようなイラストを使って説明しています。
The Lasting Connection
夫婦の関係性の燃えやすさは、燃料、酸素、熱の三つで構成されている。
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「燃料」は性格など「あなたを形作っているもの」、「熱」は相手を想う情熱や性的願望や相性などであり、二人の関係性に火をつける「火花」、「酸素」は二人の関係性を燃やすための材料ですね。
例えば、厳しい親に育てられ、孤独や辛さを口にすることがなく育ったと言う「燃料」を持ち、パートナーに愛情表現をしないと言う温度の低い「熱」を持ち、パートナーに「批判」と言う空気を送り込む場合、二人の関係性はとても冷たいものになりますよね?
そのようなカップルは冷静すぎるカップルと言えます。では、それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
燃料、熱、酸素が夫婦関係にどのような役割を果たしているのか?それがわかれば、自分たち夫婦の場合はどのように行動すれば良いのか気づきやすくなるはずです。
燃料ーあなたを形作るもの
「燃料」とは、あなたの性格や考え方を形作っているものです。
遺伝、教育歴、以前の恋人関係から愛をどのように学んだか、親からどのように愛され、どのような愛着スタイルを身につけたのか、あなたが育った社会環境、規範、ルールなどです。
例えば、幼い頃に親と一緒に過ごす時間が長く、辛いことがあった時いつでも抱きしめてくれていたなら、パートナーからの愛情を受け取ることに抵抗はなく、自分もパートナーに愛情を与えることに迷いはないかもしれません。逆に、パートナーからの愛情が足りないと感じることもあるかもしれません。
もしくは、幼い頃に親と死別や別居をしたり、両親の別居などを経験している場合、大人になった今でも見捨てられるのではないかという不安が生まれているかもしれません。
ぼくの場合、父が厳しい人であり、子供の頃は常に「口答えするな!」と怒鳴られ続けてきました。そのため、自分の感情を口にしたり、人との関係性を築くのがとても苦手でした。
なぜ、まわりの友人は苦労せず人間関係を作れるのに自分はできないのか?
なぜ、ぼくは他者との関わりが怖いのか?
そんなことを子供ながらに考えていました。
10代の終わりから20代にかけて少しづつ変わってきましたが、今でも感情にフタをしている自分に気がつくことがあります。
なぜ、自分はこうなのか?
その背景が理解できるようになれば、自分の扱いはグッと楽になります。そして、パートナーの背景もできれば、パートナーの扱いも楽になりますよね。
ぼくも自分と妻が作られた歴史的背景を知り、否定せず受け止めることで、それぞれの行動に対して悩むことが減りました。
その歴史的「背景」こそが「関係性の燃えやすさ」における「燃料」なのです。この「燃料」は人それぞれ違っていますから、夫婦で意見が異なるのは当然のことと言えますよね。
意見が異なるとつい相手を言い負かそうとしたり、自分の意見を受け入れてもらおうと対立しがちですが、「違いがあるのは当たり前」ですので違いを問題視せず、どう立ち向かうかが重要になってきます。
また、ミカエラ・トーマス博士は「生物学や遺伝学的には、自分と異なる人に惹かれるのは当然であり、夫婦の対立は自分の燃料が相手の燃料に反応しているだけ」とも言っています。
喧嘩をしない夫婦がいい夫婦と思いがちですが、異なる部分がいくつもあるというのは生物として惹かれあっている証拠とも言えるかもしれませんね。
熱ー表現された感情
熱というのは、二人の関係性の中で表現される感情のことです。つい言い合いをしてしまったり、もしくはまったく感情的なやり取りがなかったり。
言い合いをするのは、相手に対する期待が高かったり、大切にして欲しいという熱量があるからです。それ自体はそこまで悪いことではないですよね。
二人の間には「期待」や「愛情」というバチバチと火花が散っていますが、時にこの火花がコントロールできないほど燃え盛ることもあります。
二人の関係性の熱量が高すぎてしまうと、パートナーは本能的に戦うか逃げるかという闘争・逃走の本能が発動してしまうのです。
パートナーと気まずくなってしまった時のことを思い返して欲しいのですが、大体の場合、「戦う」か「逃げる」のどちらかになっていませんか?
あれは生物としての本能なんです。脅威を感じ取る「脅威システム」が発動したとも表現されます。
脅威システム(レッド)このシステムが稼働している時は、自分にとって脅威となる刺激や状況がある時に、それと闘うための準備をするモードになっています。そのため、「闘争・逃走反応」とも呼ばれます。
脅威システムについては、この動画がわかりやすいです。
英語がわかる方はこちらのクリップの方が短くまとめられているのでわかりやすいかもです。
逆に喧嘩をしない夫婦は、感情をコントロールしすぎたり、争いを恐れて意見を言わなかったりと、二人を暖めるのに十分な熱を発していないとも言えます。
熱が低すぎると、大切にされていないように感じたりと、まるでパートナーから切り離されたように受け取ってしまいます。
ぼくも妻が遠慮して意見を引っ込まれてしまった時にそういった感情を抱きますし、妻もおそらく同じだと思います。「思っていることを言って」と過去、何度も言われたことがあります。
このように、熱量は夫婦によって、もしくはシチュエーションによって変わります。その熱量をうまくコントロールすることで、愛情を感じやすくなるのです。
酸素ー送り込まれる空気
ぼくらはよくキャンプをするのですが、少しだけ火がつき赤くなった炭をうちわであおぐと燃えやすくなりますよね。
バッと炭が赤く色づき、数秒後に炎が発生する様子は単純に楽しく、うちの子どもたちは争ってうちわを仰いでいます。ですが、火のつき始めにあおがないと消えてしまうこともあります。
炎が燃え続けるために酸素を必要とするように、夫婦の関係性を燃やし続けるためにも空気が必要とされ、空気がなくなったときに二人の間にある火は消えてしまいます。
では、夫婦はどういった酸素を送り込めばいいのか?
それは、気づかい、優しさ、共感、信頼といったものです。思いやりに満ちたこれらの酸素を送り込み続けることで、二人の関係性に栄養を与え、長続きさせることができるようになります。
これらの行動は愛着行動とも呼ばれ、愛着行動無しでは人は死に至ることが確認されています。
1907年、デュッセルドルフの孤児院では子どもたちとの接触時間と抱擁の増加によって、75%の死亡率が17%まで大きく下がりました。
それだけでなく、体重も増え身長も伸び、体質的にも大きな改善が見られたのです。愛着が極端に足りないことで、脳からの生長ホルモン分泌が阻害されていたと考えられています。
それは「情緒的飢餓」と呼ばれるようになり、1950年代、イギリスの精神分析家ジョン・ボウルビィによって、愛着理論としてまとめられます。
また、13世紀の話ですが、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世は50人の赤ちゃんを集めて、一際話かけずに育てることで、子どもたちがどの言語を話し出すかを実験したと言われています。
ラテン語を話し出すのではと仮定していたそうなのですが、誰からも話しかけられることのなかった赤ちゃんたちは全員死亡したと言われています。
この話は信憑性が薄いという説もありますが、のちの孤児院での結果を見るとあながち嘘でもないんじゃないかなと、ぼくは思っています。
彼らは愛の反対である「無関心」を与えられたことで亡くなったのです。夫婦でも同じようなことが起こっていますよね。
無関心、無反応、軽蔑、嫌悪、拒絶、批判、皮肉といった酸素は二人の間に葛藤を生み、関係性を息苦しくさせ、窒息させてしまいます。
実際、不倫や婚外恋愛を人たちの話を聞いていると、情緒的飢餓がもたらす死から逃れようとしているようにも見えてしまいます。
自分たちの燃えやすさレベルを把握する
夫婦喧嘩になると、つい頭がカッとなり、拒絶や嫌悪といったネガティブな感情が螺旋階段を登るように駆け上がっていきますよね。
もしくは、傷つきたくない、傷つけたくないという思いから、きちんと思いを伝えなくなり、二人の間にかつてあった火花が消えてなくなり、真冬のような毎日を過ごしている人もいると思います。
燃えやすい夫婦、冷静すぎる夫婦。どちらにもいい点と悪い点があり、どちらのパターンがいいというわけではないのだと思います。
ただ、自分たちの熱量は今どれくらいなのか?1から10だとしたら、今どこにいるのか?
そして、パートナーと自分の燃料(生まれ育った背景など)はなんなのか?
自分たちが関係性に送り込んでいる酸素はどういったものなのか?
それを理解すると、関係性に向き合いやすくなると思うのです。少しでも参考になれば幸いです。
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