3つのワークバランス調整の難しさーーファミリーワーク、ライフワーク、ライスワーク

今回は離婚と再婚を経験したユカさんの後編をお送りした。個人的に心に残ったことを一つ書こうと思う。それはファミリーワーク、ライフワーク、ライスワーク、これらのバランス問題。
アツ@夫婦関係学ラジオ 2024.07.20
誰でも

今週はずっと出張だったため更新が土曜日になってしまいました。飛行機の中で書き溜めた記事をお送りします。

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ライフワークからライスワークへ、そして再び……。

子供を持つ人間には3つのワークが存在する。ひとつめは家事育児や家族との時間などのファミリーワーク。次にやりがいを感じるライフワーク。最後に収入のために働くライフワーク。

あなたは初めての仕事を覚えてますか?

初めての名刺、初めての会社。あいさつなど基本的ルールに始まり、少しづつ仕事を覚えていくなかで、お客さんから怒られたり感謝されながら成長していく。

第一希望の仕事でなかったとしても、多くの人にとって初めての仕事には多少なりとも「やりがい」があったはず。

金のためだけに働くのではなく、心からの喜びのために働く。できることが増え、社会人としての経験を踏むことに達成感を感じていたはず。

ぼくもそうだった。社会人一年目の職場は山々に囲まれた小さな町の呉服屋だった。

顧客開拓のために家々を訪ねアンケートを集める。月に一度の催事のために出来上がった名簿をもとに朝から晩まで電話をかけ続ける。

催事に来てくださったお客様に着物を勧める。仲間のサポートにも入るのでお昼を食べる時間はわずか5分。催事後はお客さま全員に手書きのお礼状を送る。そして、また町中の家を訪問するローラー作戦が始まる。

近くの街のグループ店にヘルプに入ることも多く、月に1〜2回は催事があった。

精神的にきつい職場だったが(ネットでは野村證券を抜いてぶっちぎりのナンバーワンブラック企業と言われていた……!)、できることが増える日々にぼくは喜びを感じていた。

新卒入社から1年半後、会社は倒産し、ぼくは都会へ出ることになる。大学の同級生に商社で働く人間が多く、大学では国際関係学を専攻していたため、単純な憧れから小さな商社で働くことになる。

初めてのホワイトワークに戸惑いながらも頑張るが、ロジカルモンスターばかりの業界に馴染めず9ヶ月後にクビになった。

その後、何度かの転職を経て、大企業内のベンチャー部門で働くこととなる。同年代の仲間たちと生まれたばかりの事業を広めようと格闘する日々の中で、ぼくはまたやりがいを感じるようになっていった。

仕事が楽しいと思えるようになった頃、子どもが生まれた。育児に格闘しながらもぼくの比重は仕事に置かれていた。

生まれたばかりの双子を養うにはお金が必要だったからだ。転職を重ねることで収入も上げることができ、なんとか4人暮らしができるようになった。

ぼくの生活が仕事に寄っていたことに妻は大きな文句は言わなかったが、そのひずみは彼女の心に影響を与えていたことは確かだ。ぼくらの間には暖かなコミュニケーションが失われていったからだ。

妻へのケアを一年間続けることでぼくらの間には親密さが生まれ、その親密さが愛着という橋をぼくらにかけてくれた。

そして現在、3人の子供たちを育てるなかで、ぼくの中にかつてあった仕事への情熱は薄れていった。それはライフワークからライフワークへの移行だったのだ。

かつてのベンチャー部門が成長し、単なる大企業の一部門へと変化したことも大きかった。当時の仲間たちは別の部門へ、別の会社へ、また一部の人間は別の国へと旅立っていった。

もはやぼくにとってこの仕事は心躍るものではなく、家計を支えるための単なるジョブへと変わってしまったのだ。

コロナによってリモートワークが増え、空き時間が増えたぼくはポッドキャストを始めることにした。

テーマは夫婦関係。これ以外に考えられなかった。これ以外に夢中になれるものもなかった。

ライフワークをこなす日々のなか、メンタルバランスを取るかのようにぼくはマイクの前で喋り続けた。

リスナーが増えるかだとか、マネタイズがどうかだなんて悩みもしなかった。この分野は本気で開拓した人が少なく、かつ多くの人が解決方法を心から望んでいるものだったからだ。

そして、ぼくにはこの暗闇に満ちた世界を明るく照らす自信と情熱に溢れていた。

誰かに伝えたかった。恋と愛の違いを、妻から恨まれるロジックを、産後の心身の変化を、情緒的親密さと肉体的親密さの違いを。

妻との関係に悩みながら電車に乗るあなたに。

夫の関係に悩みながら家事をするあなたに。

伝えたかった。

狂気のような情熱を抱えてぼくは喋り続け、書き続けた。

その狂気がぼくの精神を安定させる役目を果たしていたのだ。

それはまさにライフワークだった。

これが趣味であるうちはいいだろう。金を産まない趣味をいくら持っていようが、破産するほど金を注ぎ込まなければ夫婦関係は悪化しない。

だが、それを仕事にするとなると話は違う。趣味と呼べるほどその仕事に情熱を抱いている場合、自然とそこに費やす時間は増えていく。

プライオリティバランスも変わってくる。今のぼくの夫婦関係学活動はまだ趣味にとどまっているが、それでも土日の収録のために妻との時間調整が必要になる。ときには揉めることだってある。

これが本業となると、家庭と仕事のバランス調整はさらに難しくなるだろう。ファミリーワークの重要性を意識していないと、簡単にプライオリティが崩れそうだ。

ユカさんとユカさんの夫さんにとって、まさに仕事こそがライフワークそのものだったのだろう。自分の心が喜ぶことを仕事にできることは幸せなことだ。

だが、だからこそ仕事へのプライオリティが無意識のうちに増えていく。人生のゴールが仕事のなかに含まれているからだ。

収入を得る手段(ライスワーク)と心が喜ぶ手段(ライフワーク)が別であるうちは問題なかっただろうが、その二つが一体化しているなら話は違う。

家庭と仕事におけるプライオリティバランスのひずみに気がつくことはきっと難しい。気づくことができても自分を正当化してしまいそうだ。

それから、ライフワークとライフワークが一体化している場合、ファミリーワークの重要性に気づきにくいという課題も存在する。

ファミリーワークの重要性は気がつきにくい。

情熱に溢れた仕事、社会的に意義のある仕事。そういった仕事は自身の行動を正当化させる。

少しばかり子供と過ごす時間が減ってもいい。少しばかりパートナーと過ごす時間が減ってもいい。

なぜなら、自分の仕事はこの世界全体にとって大きな意義があるのだから。

なぜなら、情熱を抱くこの仕事があまりに楽しすぎるから。

だから、自分の衝動は許されるはず。

まだ、ライフワークが趣味レベルにとどまっているぼくですらそう感じてしまう瞬間があるのだから、仕事にしている人はなおさらだろう。

情熱あふれる仕事を達成しようとすると寝食すら惜しくなる。心のまま進み続けるなかでファミリーワークの重要性は忘れられ、その重要性は失って始めて気がつく。

ファミリーワークとは単なる家事育児のことじゃない。パートナーとともに過ごす時間も重要なファミリーワークだ。

朝ごはんを作りながらのおしゃべり、ご飯を食べながらの会話、一緒に散歩しながらの会話、眠りに落ちる前のまどろみのなかの会話。

話すことで気持ちを伝え、受け止め合う。

ぼくがファミリーワークの重要性に気がついたのは三男が生まれてからだった。3ヶ月間の育休がもたらした会社との断絶生活が、ぼくに心の余裕を授けたのだ。

丁寧にメンテナンスをしないと夫婦も親子も心が離れてしまう。まるで雨ざらしで錆びついた自転車のように。

ファミリーワーク、ライフワーク、ライスワーク。これらのバランスを取ることは確かに難しい。

だが、ファミリーワークの重要性に気がつくことで、この3つはうまくバランスするようになるんじゃないかと思う。

やりがいのある仕事は持っているけど家庭はボロボロ、収入の高い仕事をしているけど夫婦関係は冷え切っている。

だけど、夫婦仲が良ければ仕事にも精を出しやすくなり、情熱を抱く活動にも時間を割きやすくなる。2人がお互いを理解し合い受け止め合っているからだ。

夫婦仲の良さがファミリーにもライフにもライスにも必要とされている。

ライフワークとライフワークと一体化させようとしているぼくには、そう思えてしかたがない。

来週月曜朝5時からは元Apple シニアマネージャーであり、Brighture English Academyを経営する松井博さんをゲストにお迎えする。

情熱のままに生きてきたように思える松井さんが夫婦仲の維持のために取り組まれていることとは?

シリコンバレーの超ハイスペカップルたちの結婚生活とは?

来週の放送を聴いてもらえば、今回のお話もより深く理解できるようになるはず。ぜひ、お聴きください。

先日、松井さんのポッドキャストにも出演させていただいた。ぼくがなぜ夫婦関係学ラジオを始めたのかをお話しているので、聴いてもらえるとすごく嬉しい。

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それでは、良い週末を!

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