怒りのアンプに手を伸ばし音量を下げるんだ。
今回の夫婦関係学ラジオでは、離婚経験のある男性二人をゲストにお呼びしました。聴いていただければわかるように、二人ともフルオープンに自己開示をしていますよね。
なぜ離婚したのか?その時の感情は?これからどうするのか?
ありのままの気持ちを素直に話されています。ある程度のメモ書き程度の台本は用意してもらいましたが、それを超えた心の声を聴いた気がするんです。
僕は自己開示がとても大切だと思っています。自己開示ができない人ほど夫婦関係に葛藤を抱え、その葛藤の渦から抜け出せませんから。
なぜ、自己開示は大切なのか?どうすれば抜け出せるのか?
今日は番組を振り返りながら、そのあたりを詳しく見ていきましょう。
なぜ、自己開示は大切なのか?
結婚後、ノリオさんの奥さんは夫に朝帰りを禁止する。
その理由が伝えられることはなく、ただ禁止事項を言い渡された。ノリオさんはその掟を忠実に守るが、やがて奥さんが他の男性と朝帰りをするようになる。
かつての掟はどこへ行ったのか?不審に思ったノリオさんが奥さんにたずねても「あなたも朝帰りしてもいいよ」と返されるだけ。
(ずいぶん勝手なことをするんだな。だったら俺もそうしよう)
仕事のスキルレベルが妻を抜き、妻のことを下に見ていたノリオさんは、さらに妻をぞんぞいに扱うようになった。
そして、数ヶ月後の「もう、好きじゃなくなった」という奥さんの離婚宣言。
なぜ、奥さんはノリオさんに朝帰りを禁じたのか?
その言葉の裏にあったものはなんだったのか?
ぼくはそこがとても気になっている。
自分以外の人間と朝まで楽しむノリオさんを見て、寂しさを感じていたのか?
夫にとっての魅力だった「自分よりデキる女性」というブランドが崩れ去ることで生まれた焦りだったのか?
その焦りが残り少ないエロティックキャピタルをフル活用した「男性との朝帰り」を引き起こしたのか?(探偵調査によるとホテルには行っておらず、スナックで朝まで飲んでいただけだった)
不倫するほど倫理観が壊れていないがために、離婚というカードしか切れなかったのか?
朝帰り禁止の裏には奥さんの隠された思いがいくつもあったはず。
仕事では論理言語が重要視され、家庭では情緒言語が重要視される。そのため仕事ができる人ほどこのトラップに陥りやすい。
呉服屋で働いていた頃、お客さんの多くは夫の論理言語に疲れ果てた女性ばかりだった。
癒しを求めて女性たちは男性従業員とのおしゃべりに興じ、呉服を買い求める。それは満たされない自己受容を異性と高級品で代替する行為だった。
自己開示とは情緒言語の解放を意味する。なぜなら、ロジカル思考では人の心を開けないからだ。
過去を振り返り、ノリオさんは「奥さんが朝帰りするようになったときに(気持ちを)言えばよかった」と語った。
自分のパートナーが他の異性と朝帰りをするなんて、面白くないに決まっている。
怒り、悲しみ、恥、さまざまな感情がノリオさんの心を傷つけたはず。
なぜ、妻は夫に朝帰りを禁じたのか?
なぜ、夫は妻の朝帰りに不満を抱きつつ黙ったのか?
彼らがそこを明らかにしたならば、違った未来が広がっていたかもしれない。情緒言語の解放による自己開示が、夫婦の未来を変えるからだ。
自己開示はどうすればできるのか?
妻を下に見る自分。夫から相手にされない自分。
そんな情けない自分にフォーカスをあてることはとてつもない苦行だ。だからこそ、多くの人は口をつぐみ、ネガティヴな感情だけを心の中で増幅させていく。
六畳一間のワンルーム。そこでは大型アンプからパートナーへの不満が大音量で流されている。
あなたはアンプの前で膝を抱え、音圧に髪を振るわせながら座っている。
なんだあいつ。ふざけてる。バカにしてる。ちくしょう。
パートナーへの罵り。自分への恥ずかしさ。それらが垂れ流されるアンプの前からあなたは離れられないでいる。
とうとう、その音に耐えきれなくなったとき、あなたは部屋から出ていくのだ。
どこへ向かうのか?
それはモラハラ、パワハラ、不倫といったネガティブリレーションシップであり、行き着く先は離婚だ。
でも、気がついて欲しい。
そのアンプのスイッチを入れたのは誰だろう?
音量を上げたのは誰だろう?
あなただ。
あなたがアンガーアンプのスイッチをパチンと入れ、音量ノズルをグイッと回し、マックスまで音圧を上げたのだ。
だったら、消すこともできるはずだ。
ノズルに手を触れ、少しづつ音量を下げ、最後にスイッチを切る。
あなたにはできるはず。
まずは、二人を取り巻くネガティヴループを止めよう。
誰が止めるのか?
あなただ。
あなたが始めるんだ。
パートナーへの恨みが垂れ流されるアンプのスイッチを切り、なぜ、そう感じるのかに思いを巡らそう。
パートナーへの不満はどこからやってくるのか?真っ白な紙に書き出してみよう。
そこにはどういう感情があるだろうか?
怒り、悲しみ、そして恥。
さまざまな感情があるはず。ちゃんとしなきゃなんて思いはゴミ箱に捨て、素直な気持ちをあぶり出そう。
あなたと同じ苦しみを抱いている人は世界中に何億人もいる。誰もがあなたと同じ苦しみを抱いている。あなたは一人じゃない。
だから、その気持ちを素直に受け止めていいんだ。
かっこ悪くて、情けなくて、ダメだなと思う自分をまずは受け止めよう。どうするかはその後に考えればいい。
僕は商社勤務時代に「感じたことを全部外に出すな(しゃべるな)」と言われた。呉服屋の教えとは真逆だ。
だが、カップルリレーションシップにおいては感じたことを外に出す必要がある。人によっては「感じない」ようにしている人もいるはずだ。
「感じない」ことで感情のスイッチを切り、傷つきから逃れられるからだ。
カップルリレーションシップでは傷つきの体験からは逃れられない。自己開示は痛みをともなうからだ。だが、その先に相互理解の快感が待っている。
情けない裸の自分をさらけ出すことは恐怖そのものであり、人は自分を守るために心を閉ざすのだ。
僕だっていまだに妻に心を開こうとすると涙が出てくる。柔らかな気持ちを人に見せることは、たとえそれが妻であっても日本刀で切り刻まれるような感覚になる。
自己開示とは痛みだ。
傷つけられるかもしれない心理的恐怖は、身体レベルで感じる痛みと同等なのだ。
傷つきへの恐怖を乗り越えられた時、あなたは自己開示を達成できる。
心を開いた結果、傷つくこともあるだろう。
だが安心して欲しい。あなたと同じ体験をした人は星の数ほどいる。ぼくだってそうだ。関係性が悪い二人がいきなりお互いに心を開き合うことはないだろう。
何度も繰り返すんだ。
あなたがパートナーを想う気持ちが本物であり、お互いに関係性を壊したくないと望んでいるならばきっとうまくいくはず。
もし仮に、あなたのパートナーに関係性を立て直す気がまったくなく、うまくいかなかったとしても悪い方向には転ばない。
ポッドキャスト「バツイチな二人の日常」を聴いて欲しい。
彼らが不幸のどん底にいるように見えるだろうか?
タワマンの家賃並みの固定資産を毎月支払いながらも、毎日を明るく前向きに生きている。離婚の危機にある男性にとっては救いになる発信のはずだ。
ノーベル文学賞を受賞したジョージ・バーナード・ショーもこう言っている。
結婚は二人を一つにするが、それは問題を解決するという意味ではない。時に、離婚はお互いの幸せのための最善の手段である。
あなたもあなたのパートナーも、ただ幸せになりたかっただけ。二人の利害は一致している。
最後にもう一度。
心のアンガーアンプに手を伸ばそう。見えるだろうか?音圧に筐体を震わせる黒いアンプが。
さあ、ボリュームノズルに指をかけるんだ。ゆっくりとノズルを回し、音量を下げていこう。
下がり切っただろうか?そうしたら、最後にスイッチを切ろう。
パチン。
残響がしばらく耳をわずらわすだろうが、次第に聴こえなくなる。
もう大丈夫。
誰もがあなたと同じ苦しみを抱いている。ぼくらはともにある。一緒にパートナーと向き合おう。
傷つきへの恐怖を感じながらも、心を開くんだ。
傷ついたとしても大丈夫。あなたの隣にはぼくがいる。ぼくだけじゃない。あなたと同じように恐怖を乗り越えようとする仲間たちがいる。
だから、大丈夫。
あなたは大丈夫。
大丈夫。
◇
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PS.
9/14の3連休に家族で京都旅行に行ってきます。子供達の10歳のお祝いです。彼らにどこに行きたいと尋ねたら京都という答えが返ってきたんです。
子供達と僕ら夫婦はみんな戦国時代にハマっており、最近の旅行は城や古戦場を訪ねるものばかり。名古屋城、清洲城、犬山城、そして関ヶ原。関ヶ原の大谷吉継のお墓はとても静謐な場所で素敵でした。おすすめです。
京都のどこに行きたいかと次男に聞くと「応仁の乱」巡りがしたいとのことで、刀傷が柱に残っている千本釈迦堂や、三日間炎上した相国寺などが候補に上がってます。あとは、徳川家康が宿泊用に作った二条城とかですね。
日本史にハマってからは国内旅行が一気に楽しくなりました。きっかけは角川の歴史漫画です。これ、すごくドラマチックに描かれていて普通に泣けます。
最近は子供達が世界史にも興味を持ち、世界史編も購入しました。こちらもドラマチックで特に南北戦争の話とか本当に泣けてきます。普通におすすめです。
歴史という夫婦共通の言語ができたおかげで、どこに旅行に行っても味わいが一段深いものになりました。また、子供達とも共通言語で会話できるので楽しいですね。普段はよくわからんYouTuberの話ばかりなので・・・。
それでは、また来週お会いしましょう!良い週末を!
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