人はなぜ不倫するのか?
「妻から愛されていないと思っていた」
ポンクさんの夫はそう言った。それが4年間にわたる不倫の原因だった。
パートナーと過ごす毎日が当たり前となり、いつしか相手は空気のような存在となる。空気がなくては人は生きてはいけない。だけど、そこにあるのが当然だと思っていると感謝なんで生まれてこない。毎日、空気に感謝を伝える人間がいないように。
人はなぜ不倫をするのか?
今回の放送はそこに一つの答えを与えてくれた。
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誰もが「大切にされている実感」を求めている。
愛がないと生きていけない。そんな言葉をよく聞く。あまりにも使い回されすぎ、この言葉に何の意味も見出せない人もいるだろう。
そもそも愛とはなんだろうか?性の問題を抱える夫婦はそこに性的な課題も含めてしまう。だが、「生きていくために必要なもの」はセックスそのものではなく、それによって感じられる「大切にされている実感」だ。
人は他者から大切にされないと生きていけない生物であることは愛着理論からも明らかだ。
イギリスの精神分析家ジョン・ボウルビィは、イタリアの戦争孤児たちの発達課題を調査した際に、孤児たちの発達に必要なものは「アタッチメント(愛着)」であることを発見し、それを愛着理論としてまとめた。
当時の孤児院では戦争孤児たちがバタバタと亡くなっていたのだが、死因は栄養失調ではなく愛情不足だったのだ。養育者が頬に触れたり抱きしめたりする接触時間を増やしただけで、死亡率は改善されたのだ。
1950年代第二次世界大戦後のイタリアで孤児院、乳児院などに収容された戦災孤児の発達、身長、体重の増加、罹病率、死亡率、適応不良などが問題になり、施設病ではと疑われたとき、彼はその調査に携わり、1951年に母親による世話と幼児の心的な健康の関連性についての論文を発表した(愛着理論)。その中で新生児が自分の最も親しい人を奪われ、また新しい環境に移され、その環境が不十分で不安定な場合に起きる発達の遅れや病気に対する抵抗力や免疫の低下、精神的な問題などを総称して「母性的養育の剥奪」(deprivation of maternal care)と定式化し、後にこの概念は世界保健機関による親を失った子供たちのための福祉プログラムの根幹となった。
そして50年後、イギリスのカップルセラピストであるスー・ジョンソンによって、愛着をカップルセラピーに応用したエモーショナリー・フォーカスト・セラピーが生まれる。
子供も大人も「大切にされている実感」がないと生きていけない。オアシスのない砂漠を旅するように、心の中も飢餓状態となる。
だけど、ぼくらはつい「大切にされている実感」を軽視しがちだ。
仕事に子育てに家事、そして自己実現の追求。やるべきこととやりたいことが溢れ返り、目の前の大切であるべき人へのケアを忘れてしまう。
もし、家庭が草が一本も生えることがない砂漠状態であったならば、「生きる」ために水を求めるだろう。
そして、その水をパートナーが与えてくれないのであれば、外に求めることは何も不自然なことではない。
ぼくは不倫を肯定しているわけじゃない。ただ、不倫に足を踏み出す人には、そういった行動を取る理由があり、その理由は無視すべきではないと思っている。そうでないと、本質的な解決はできないからだ。
Xには「サレ妻」や「サレ夫」というワードが飛び交い、今日も憎悪に満ち満ちている。煮えたぎるような憎悪に引き寄せられた人々がそこに燃料を投下し、永遠に消えることのない憎しみをどこまでも燃え上がらせている。
だが、それで何が変わるのだろうか?
不倫は降って湧いた災難ではない。二人の関係性から生まれた課題だ。
人がいつも求めているものは「大切にされている実感」だ。それを忘れちゃいけない。
多様化する不倫の出会い場所
2017年の日本家族計画協会の調査によると、浮気・不倫体験のある男性は37%、女性は24.4%だった。それが2020年になると、男性は67.9%、女性は46.3%まで上昇する。
性風俗の利用も含まれているため、実際の不倫割合はそこまで高くないだろうが、それでも30%の上がり幅はかなり大きい。
この3年間に何が起こったのだろう? 一つはマッチングアプリ市場の拡大だ。
2021年の三菱UFJフィナンシャル・グループの調査によると、2018年から2021年の間に市場が60%も拡大していることがわかる。
1990年代までマッチングアプリは存在せず、「出会い系」という印象のよくない市場だけが存在していた。それがiPhoneの登場によりアプリが広がり、テレビCMの効果もあいまって健全なイメージがつき、コロナ禍を経て男女の出会いの場として一般化した。
そして、既婚者にとっても手っ取り早く浮気相手を探せるツールとなっていった。一方、スマホの普及は出会い目的ではない趣味系アプリの市場も開拓した。それによって、本来の目的(趣味を通じた交流や出会い)から外れた不倫のきっかけ作りの場にもなっている。
経済的に余裕のある男性にはパパ活も不倫のきっかけになっている。キャバクラと違い、一対一でやり取りをするパパ活は恋愛感情が入り込みやすく、ハマりやすい傾向がある。しかも相手が20代前半の若い子となれば、理性のタガが外れる男性は多い。
職場での出会いもあるが、発覚がしにくいオンラインでの不倫の方が多いのではないかなと、様々な方のお話を聞いていても感じる。
日本は性風俗に関する規制が緩いため、これからもこういった不倫関連市場は伸びていくだろう。つまり、不倫のきっかけなんてそこら中に転がっているのだ。たった数タップで不倫相手が見つかる。
呉服屋で働いていた頃、お客さんが求めているものが本当は着物ではないことに気がついたことがある。純粋な着物好きな方もいたが、多くの方は呉服を通じて「ここではないどこか」に行きたがっていた。
一人の女性として輝くこと。一人の女性として求められること。
そのための手段として呉服があり、求めてくれる販売員がおり、居場所としての呉服店があった。
日常生活に情緒的な不満があるからこそ、数十万円や数百万円もする呉服でその心の隙間を埋めようとしていたのだろう。それもまた愛着の問題だったのだと思う。
話をパートナーシップに戻そう。夫婦もまた、お互いに愛着の問題を抱えているからこそ、その心の隙間をどこかで埋めようとする。
パートナーがその穴の存在に気がつかなかったり、軽く扱ったりするする場合、外でその穴を埋めようとするだろう。なぜなら、それは愛着の問題だからだ。生きていくために愛着が必要だからだ。
そして、外から愛着を補充しようとする時、あまりにもその手のサービスが世の中に溢れかえっているため、簡単に手を出せてしまう。
だが、セックスや疑似恋愛によって愛着を補充できたとしても、家に帰れば不毛砂漠が広がっている現状は変わらない。満たされない愛着を求めて、さらに外に求めようとするだろう。
ポンクさんご夫婦は不倫が発覚して本当に良かったとぼくは思っている。二人がお互いの愛着不足に気がつき、お互いへの愛着の大切さに気がつけることができたからだ。
不倫の傷はPTSD並みに辛い。心の傷は薄れていくが消えることはない。ずっと二人が背負っていくものだ。だが、その道のりを通して、さらに二人の愛着は深まっていくのではないかと思う。ハードな道であることは確かだが。
来週はポンクさんが実践した心の傷の回復方法をお話しいただく。パートナーの不倫に悩んだ経験のある方はぜひお聴きください。
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