妻の「恨み」の解きほぐし方とは?

夫に向けられる妻の恨み。恨みはなぜ生まれ、どのように肥大化したのか?そして、ぼくら夫はどうすれば妻の恨みを解体することができるのか?学術的データをもとに紐解いていきます。
アツ@夫婦関係学ラジオ 2024.02.02
誰でも

妻から「触れられたくない」、「婚外恋愛したい」など、急に言われたらびっくりしますよね。

実際にそういう体験をされた男性のお話を聞くと、みなさん突然のことに戸惑い、不安の渦の中に放り込まれます。

ですが、実は「妻が夫を恨む」にはプロセスがあるんです。その順序を理解すると、妻の心理が理解でき、世界の終わりのような現状に対しても向き合いやすくなります。

その順序は次のようなものです。

1:夫からネガティブな言動を与えられる

2:夫からのネガティブ言動が妻にトラウマを植え付ける

3:トラウマが妻の脳の記憶処理システムに刻まれ、偏桃体が夫を不快と判断する。

4:トラウマ体験に触れることによる関連感覚の再活性化

詳しくみていきますね。

この記事は下リンク先のポッドキャストの解説記事となります。ポッドキャストと合わせてお読みいただくと、より理解が深まります。

夫によるネガティブな言動

子供が生まれると妻に対して遠慮がなくなり、大切に扱わなくなる人も多いかと思います。少なくとも、出会ったばかりのような慎重さで妻を扱っている人はほとんどいないはず。

生まれた子供へのケアに二人の意識が集中し、お互いの感情や意見に注意を払わなくなりがちです。すると、夫婦はお互いへの小さな感謝ポイントに気がつきにくくなり、感謝の言葉をかけ合わなくなっていきます。

感謝の言葉の不在により、相手への失望感や興味の喪失が生まれ、ますます妻を大切に扱うことをおこたるようになります。これは妻側でも起こる問題ですが、育児によって疲弊している妻にとって、夫のネガティブな言動は強い攻撃力を持ったものとなります。

学術文献プラットフォーム『Personality and Individual Differences』に掲載された研究報告によれば、パートナーへの感謝を心の中で強く感じている夫婦は結婚満足度が高いといいます。

心の中で強い感謝を感じているということは、相手に表現するときにも強く伝わりやすくなり、上辺だけの感謝の言葉とは比較にならないほどのポジティブな波を相手に伝えられるからです。

逆に夫婦間の感謝の言葉が少ない夫婦は結婚満足度が低いことがわかっています。たかが感謝の言葉とぼくらは考えがちですが、思っている以上に大きな力を持っているようです。

よく耳にした夫のネガティブな言動は、出産後に身体的にギリギリの辛い時に夫が助けてくれず、それどころか「母親がそれでどうするの?」や「俺の休みはいつあるんだ?」といった自分本位なものです。

妻と子供たちが体調不良で倒れた時に、妻から「早く帰ってきて欲しい。看病をして欲しい」などとヘルプを出されても無視をしたケースもあります。

その背景には、妻が自分の主張を強く表現できない非主張的自己表現のトラップにハマっている場合もあるのですが、いずれにしてもこういった夫の言動が妻の恨みを熟成させるトリガーとなることは間違いありません。

また、妻の妊娠中や出産後まもなくの夫の浮気も、心身ともに疲弊している妻にとっては特に大きなダメージを与え、夫に対する信頼を大きく損なわせるきっかけとなります。夫が浮気をし精神的に大きなダメージを負った女性の話をいくつも聞きました。

夫のネガティブ言動のトラウマ化

嫌な記憶はいつまでも頭の中に残り続けますよね。特に大きなショックを感じた出来事はトラウマと呼んでも良いほどの大きなダメージを妻の脳に与えます。

トラウマというと大げさに感じるかもしれませんが、実際、夫から受けた言動によって起こる妻側の心理的変化を聞くと、驚くほどPTSD(心的外傷後ストレス障害)の条件と重なります。

まず、侵入症状。これは苦しみを感じた出来事が頭の中に入り込んでくるかのように、繰り返しよみがえり、コントロールすることができない症状です。夫が病気で弱った私と子供たちを助けてくれなかった。ワンオペ育児で苦しんでいた時に夫からひどい言葉をかけられた。信じていた夫が不倫やパパ活をしていた。

思い出したくなくても思い出してしまう。その事件と関連のある場所を通っただけで記憶がフラッシュバックする。夫の思いやりに欠けた言葉がいつまでも頭の中を駆け巡る。

次は、その出来事を思い出させるあらゆる物事の回避です。夫が着た服、夫が使った家具、夫がいる部屋、なにもかも避けるようになります。もちろん、夫自身にも近寄りたくなくなります。

夫が浮気をしていた場合は、浮気をしていた場所や浮気相手と連絡を取っていたスマホを夫が手にするだけで、そこから逃げ出したくなります。

また、強い疎外感を感じ、楽しみへの関心を失い、うつ病を伴うこともります。産後クライシスや浮気などと、簡単な言葉で片付けがちですが、実は「夫のネガティブ言動」は妻を精神的に追い詰める破壊力を持っているんです。

PTSD症状については、以下の日本トラウマティック・ストレス学会のサイトが詳しいです。

侵入症状、回避症状、認知と気分の陰性の変化、覚醒度と反応性の著しい変化。

上記の症状が1ヵ月以上持続し、それにより顕著な苦痛感や、社会生活や日常生活の機能に支障をきたしている場合、医学的にPTSDと診断されます。
https://www.jstss.org/ptsd/

このトラウマ体験は、妻の脳の記憶処理システムに刻まれていきます。

トラウマが妻の脳の記憶処理システムに刻まれ、偏桃体が夫を不快と判断する。

強いトラウマ体験は脳の記憶処理システムに深く刻まれ、同じことが起こった際に、脳の偏桃体が強い嫌悪感を感じるようになります。

扁桃体は、不安や恐怖などの感情を感じた時に活動することが知られています。過度な不安や恐怖が症状であるうつ病、不安障害やPTSDといった精神疾患においては、扁桃体の活動が過剰であること知られています。  
https://www.qst.go.jp/site/qms/1656.html(量子科学技術研究開発機構)
赤い部分が偏桃体(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%81%E6%A1%83%E4%BD%93)

赤い部分が偏桃体(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%81%E6%A1%83%E4%BD%93)

偏桃体は人を含む動物の快不快といった感情に強い影響を与えており、ラットを使った実験では、音を聞かせながら電気ショックを与える条件付けを行うと、音だけで血圧上昇が起こることがわかっています。

恐怖などの情動記憶は偏桃体に保存され、それを怖いものとして評価や学習をし、その出来事に少しでも関連する刺激が起こると脅威システムを鳴らすようにできています。(出典:https://www.actioforma.net/kokikawa/kokikawa/amigdala/amigdala.html)

つまり、偏桃体は人を恐怖から守るための自然のプログラミングというわけです。

偏桃体についてはこの動画が分かりやすいです。1:46あたりから偏桃体の説明が始まります。

パブロフの犬という実験が有名ですが、あれも同じです。古典的条件づけ理論と呼ばれており、ベルを鳴らして犬に餌をあげているとベルを鳴らすだけでよだれを垂らすようになります。この場合は快の条件付けですが、夫=不快の場合は先ほどのラットの実験と同じで不快の条件付けとなっているわけです。

妻からの恨みは単なる夫婦間の仲の悪さという単純な理解で片づけられるケースが多いですが、実は脳の仕組みを変えるほどの大きな変化が起こっているのです。

そして、最終ステージがこちらです。

トラウマ体験に触れることによる関連感覚の再活性化

産後クライシスはもう何年も前なのに、自分(夫)が浮気をしたのはもう昔のことなのに、いまだに妻は同じ話を蒸し返してくる。もう、過去には戻れないのに。

男性の皆さん、そう感じたことはないでしょうか?

実は妻の脳内では過去のことではなく、今も続いている現在の話なのです。なぜならば、記憶は脳がつかさどっていますが、その脳が本人の意思とは関係なく、過去のトラウマ体験を頭の中で繰り返し上映し続けているからです。

スタンリー・キューブリック監督「時計仕掛けのオレンジ」という映画で、主人公が刑務所内で椅子に縛りつけられ、目を無理やり開かさせ、残虐行為動画をひたすら見させられ続けるというシーンがありますが、トラウマが何度も脳内で再生されるのはこれに似ています。

https://filmaga.filmarks.com/articles/2222/

https://filmaga.filmarks.com/articles/2222/

夫から受けたトラウマ体験に触れたり思い出すだけで、関連する感情や感覚が再活性化されるのです。

例えば、子供が小さい時に夫が全然家に帰ってきてくれず、自分と子供たちが体調を崩し、とても大変な時があった。その時、夫から冷たい言葉をかけられた。もし、それがトラウマになっているとしたら、家族の誰かが風邪を引くことがトラウマ再活性化のトリガーになります。

トラウマ体験が再活性化され、それにより夫への嫌悪感が強化されていく。これが記憶の再固定化と呼ばれる現象です。

下の記事の「恐怖条件付け」が分かりやすいです。恐怖を感じる体験をし、その時の視覚や聴覚が恐怖刺激となり、それが恐怖気記憶となる。そのため恐怖体験時に近しいなにかを体験するだけで、恐怖感情が蘇ります。

この記事にあるように、PTSD治療には認知行動療法が有効と言われており、もし夫婦間の葛藤においてPTSDレベルの課題を抱えている場合は、トラウマ治療専門家を頼ることを強くおすすめします。一人ではどうにもならないからです。

ぼくがコンパッションを学んでいる先生の話によると、トラウマ治療にはコンパッション・フォーカスト・セラピーも効果的だそうで、色々試されてみてもいいと思います。

このように四つのステージを通して、妻は夫に対する無意識の嫌悪感を構築し、それを日々強固なものへと育てていきます。ぼくら男性にとっては突然のことのように見えますが、その背景にはこういった理屈があったのです。

次に、どうすればいいのかについて見ていきましょう。

妻の恨みの起点を明らかにする

まず、妻がトラウマを抱くに至った出発地点はどこだったのか、これを明らかにする必要があります。ただ、本人も無意識のうちに恨みを強化させていくケースが多いため、本人に聞いても答えてもらえないこともあります。また、トラウマを思い出させる体験にもなるため、慎重に対処する必要があります。

中には、「妻として家事育児のほぼすべてを担当するのは当然だ」と、女性自身が無意識の内に思い込んでいるケースもあり、トラウマの出発地点を自分で認めようとしないこともあります。

「夫の方が収入が高く、私は家にいる時間が多いのだから、私が家事育児をたくさんやらないといけないんだ。それができない私はダメな妻でダメな母親なんだ」

そう自分を縛り付けていることもあります。妻との会話のなかでこういった妻の思い込みに気がついたら、その呪縛から解き放ってあげてください。

君はダメな妻じゃない、ダメな母親でもない。俺たちは夫婦なんだから、一緒に支え合っていこうと。

イギリスの精神分析家ウィニコットが提唱した考え方に「Good enough mother(ほど良い母親)」があります。Good mother(良い母親)ではなく、ほどほどに良い母親であればいいという考え方です。子供の欲求に100%応えることはできませんし、そんなことを目指していたらメンタルをやられてしまいますよね。だから、そんなに無理をしなくてもいいよというわけです。

これは夫婦間でも言えることだと思うのです。Good Partner(良いパートナー)ではなく、Good enough partner(ほど良いパートナー)。家庭や夫婦の在り方は人それぞれなので、自分たちに合ったパートナーシップを見つければいいんじゃないかなと思っています。

妻を責めると、記憶の再固定化が強化されるので、決して責めてはいけない

次に、妻の恨みの起点を辿っていくと、過去の夫の出来事に対して強く責められ、言い返したくなる時があると思います。あの時はこういう事情があったんだよ。どうにもならなかったんだよと。その気持ちはよくわかります。ですが、そこで反論してしまうと、妻のトラウマ体験が活性化され、夫への不快感情をますます固定させていきます。

言い返したいことはあるとは思いますが、まずは妻の話を黙ってすべて聴きましょう。その妻の言葉の中に、妻がなにを望んでいたのか、本当はどうしたかったのかという柔らかな気持ちが隠れているからです。

柔らかな気持ちは、怒りという二次感情に包まれ見えなくなっています。おにぎりの海苔と白米が怒りで、中身の具が柔らかな感情(寂しさ、辛さなど)です。ですから、妻の海苔と白米を少しづつ取り去っていく必要があるのです。

二次感情とは「ある感情(一次感情)が発生した後に発生する感情」のことです。悲しい、不安、苦しい、後悔、困惑、恐怖…こうした一次感情が積み重なり、怒りという感情は生まれます。怒りそのものが突然発生することはなく、そこには必ず何かあなたの「こうあってほしい」「こうあるべき」が裏切られたことから生まれた感情が潜んでいます。怒りを感じたとき、『どういう感情が隠れているのか?』を考えることが大切です。
東京女子大学(https://www.twcu.ac.jp/main/campuslife/support/r08ji800000036ye-att/1910column_angermanagement.pdf)

パートナーへの怒りが湧いてくると、怒りに感情を振り回されてしまいますが、その怒りというレイヤーの下には何があるのか?自分が何を感じているのかが重要です。同時に、妻から怒りを向けられた時、自分の脅威システムがオンになるため、闘争か逃走の反応をどうしても取ってしまいます。

(なんだよ、俺だって色々あるんだよ!俺の全てがダメだって言うのかよ!)と攻撃的姿勢を取りがちですが、それは生物としての反応でしかありません。脅威システムからドライブシステム(行動を起こすシステム)に一直線に移動はできませんので、気持ちを落ち着かせ、妻の怒りの下に何があるのか、把握する努力が必要になります。

脅威システムからドライブシステムに行くにはスージングシステムを迂回する必要がある。

脅威システムからドライブシステムに行くにはスージングシステムを迂回する必要がある。

怒りに飲み込まれそうになったら、腹式呼吸で深呼吸をしたり、外を散歩したり、運動をするなどしてセロトニンを分泌させて気分を変えるようにしましょう。

次に大切なことは、妻の思いやりを持ちながら、好奇心を持って接することです。

妻への思いやりには好奇心を伴わせる

パーソナリティ障害を抱えたクライアントに対して、コンパッション・フォーカスト・セラピーを実践しているケイト・ルクレ博士、カップルや夫婦の問題をを抱えたクライアントに対して、コンパッション・フォーカスト・セラピーを実践しているミカエル・トーマス博士。お二人のワークショップに参加した際、お二人ともが同じことを言っていたのです。

それは、"Curiosity"。好奇心です。

初めは意味が分かりませんでした。「パートナーのことに、自分のことに、好奇心を持って見つめてみよう」「自分や他者へのコンパッションに好奇心を持とう」と、何度も言われました。

何度もコンパッションのワークに参加するうちに少しづつわかってきたことは、思いやりとは意識しないと消えてしまうほど儚いものであることです。妻に対する感謝の気持ち、それはとても小さな出来事に対することでもあります。例えば、いつも洗濯機を回してくれる、いつも夕ご飯を作ってくれる、いつも玄関の前を掃き掃除してくれる、いつも子供の宿題のチェックをしてくれる。

そんな些細で、日常生活の中に溶けて見えなくなってしまうものの積み重ねです。結婚生活は日常生活の積み重ねだから当然ではありますが、よく考えてみるとそうですよね。パートナーへの感謝ポイントは無数にあるのだけど、あまりにも日常すぎて、あまりに当たり前すぎて、ぼくらは見落としてしまっているのです。

妻は今日は何をしていたのか?その時、何を感じていたのか?妻はなぜこう言ったのか?その言葉を出すに至った心理的背景とは?

そこに”好奇心”を持って入り込んでいく。

そして、自分たちの関係性にも好奇心を持つ。なぜ、自分たちの歯車はうまく噛み合わないのか?お互いの気持ちを受け止め合っているのだろうか?もしそうでないなら、それはなぜだろう?

相手の批判、もしくは自己批判に飲み込まれそうになるけれど、罪悪感や嫌悪感ではなく、「なぜなのだろう?知りたい」という「好奇心」だけをたずさえて、まるで探偵にでもなったかのように二人の関係を見つめるのです。

実際、好奇心にはいくつものメリットがあります。人は興味があるトピックについて学ぶとドーパミンが分泌され、学習プロセスそ促進し記憶力を向上させます。また、他者への好奇心は深い理解と共感を促し、対人関係を改善しより強い絆を生み出します。そして、好奇心は新しいことを学ぶ喜びへとつながり、これが人生に対する幸福感の向上にもつながるのです。

The trait of curiosity is not just reserved for children—psychologists and neuroscientists from around the world have found that curiosity is a driving force for exploration and critical for healthy development and learning. Practicing curiosity is associated with enhanced psychological well-being, grit, subjective happiness, and meaning in life, as well as lower rates of depression and fewer negative emotions.
https://www.psychologytoday.com/us/blog/healthy-minds/202301/curiosity-is-a-key-to-well-being

(邦訳)世界中の心理学者や神経科学者が、好奇心は探求の原動力であり、健全な発達と学習に不可欠であることを発見している。好奇心の実践は、心理的な幸福感、気概、主観的幸福感、人生の意義の向上、うつ病の発症率の低下、否定的感情の減少と関連している。
https://www.psychologytoday.com/us/blog/healthy-minds/202301/curiosity-is-a-key-to-well-being

ニューヨーク州立大学バッファロー校の研究によると、相手に好奇心を示すことは親密度を上げる手段となることがわかっています。

One study asked strangers to pose and answer personal questions, a process scientists call “reciprocal self-disclosure.” They found that people were rated as warmer and more attractive if they showed real curiosity in the exchange (while other variables like the person’s social anxiety and their levels of positive and negative emotions did not affect the partner’s feelings of attraction and closeness). This implies that demonstrating curiosity towards someone is a great way to build your closeness with them.
https://greatergood.berkeley.edu/article/item/six_surprising_benefits_of_curiosity

(邦訳)ある研究では、見知らぬ人に個人的な質問を投げかけ、それに答えてもらった。その結果、そのやりとりの中で本当の好奇心を示した場合、人はより温かく魅力的であると評価されることがわかった(一方で、その人の社会不安や肯定的・否定的感情のレベルといった他の変数は、相手の魅力や親近感の感情には影響しなかった)。このことは、相手に対して好奇心を示すことは、相手との親密度を高める素晴らしい方法であることを示唆している。
https://greatergood.berkeley.edu/article/item/six_surprising_benefits_of_curiosity

次に、どうやって妻の恨みの核心に迫るかについてみてみましょう。

妻の恨みの核心への迫り方

ぼくがよく失敗したケースは、妻が忙しいタイミングにあれこれ質問してしまい、かえってイライラさせてしまったことです。これは妻とぼくの家事分担がはっきりと分かれていると、今妻がやっていることの時間的緊急性が理解できず、結果的に時間を奪うことになり妻を焦らせてしまったのです。

それ以来、できる限り、妻がリラックスしているタイミングに質問や相談をすることにしてみました。ソファで横になっている時、布団の上で横になっている時が多いです。横になると緊張が和らぎ、心拍数や呼吸が落ち着き、リラックスしやすいからです。

It turns out, lying down can actually trigger your body's relaxation response. According to research, when you lie down, your breathing and heart rate naturally slow down, and your muscles start to relax. This, in turn, reduces your blood pressure and helps calm your nervous system. Who knew that something as simple as lying down could have such a powerful effect on our bodies?
https://www.aurahealth.io/blog/the-benefits-of-lying-down-how-it-can-improve-your-health-and-well-being

(邦訳)横になることで、実際に体のリラックス反応が引き起こされることがわかった。研究によると、横になると呼吸と心拍数が自然に遅くなり、筋肉がリラックスし始める。その結果、血圧が下がり、神経系が落ち着くのだ。横になるという単純なことが、私たちの体にこれほど強力な影響を与えるとは誰が想像できただろうか。
https://www.aurahealth.io/blog/the-benefits-of-lying-down-how-it-can-improve-your-health-and-well-being

それから、好奇心を持って妻に質問をする際、つい何度も「なぜ?」と聞いてしまいますが、本人ですら自覚できていない課題もあるので、あまり聞きすぎると妻の脅威システムがオンになり、敵対的な態度を取られてしまいます。そのため、妻の表情、声の高さなど非言語コミュニケーションに注意を向け、どこまで踏み込んでいいのかを注意深く判断する必要があります。

その時に重要なことは、妻の言葉と行動の裏にある「感情」に集中することです。ぼくらはつい妻の言葉に気を取られがちですが、言葉は感情を表現する手段に過ぎません。その言葉を発した妻が、その行動を取った妻が、何を感じているのか?何を「考えていたか」ではなく、何を「感じていたか」に集中するのです。

その感情を掘りこせたら、次は妻の感情の共有に反発せず、理解と共感を示し、自分がどう感じていたかを素直に伝えましょう。それは恥ずかしいことであったり、恐怖であったり、情けないと感じることかもしれません。ですが、素直な自己開示の連鎖が二人の距離を縮めてくれるはずです。

妻への共感が難しい場合は、「理解」はすることはできると思います。こういうことがあって、こう感じて、その結果こういう行動を取った。そこに論理的な理解をすることはできるはず。ASDと呼ばれる発達障害は共感が難しいと言われていますが、「理解」によってパートナーシップを作ることはできると、発達障害者支援を長年続けている広野ゆいさんがおっしゃっていました。

妻の感情への共感力を上げるもう一つの方法はコンパッショントレーニングです。これについては別のタイミングで詳しくお話ししますが、簡単にいうと、自分から自分へ、他者から自分へ、自分から他者への思いやりの気持ちを育むトレーニングです。

思いやりというとふわっとしたものに聞こえますが、心理学、脳科学的にも実証されているアプローチです。これについては別記事で詳しく掘り下げる予定ですので、お楽しみにお待ちください。

少しでも参考になれば幸いです。

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