これから始めるパートナーシップ事業について。

こないだの夫婦関係学ラジオは久しぶりの夫婦配信でした。僕が会社を辞めることを妻はどう思っているのかを聞きながら、ぼくが感じたことを書こうと思う。
アツ@夫婦関係学ラジオ 2024.10.25
誰でも

会社員として働くことに抵抗を感じるようになったのはいつからだろう?

何年も前から違和感はあったけれど、嫌悪感と呼べるほどの抵抗を感じ始めたのは今年からだった。

責任を逃れるために並べられる言い訳。

兵隊のように忠実な無思考性。

組織からはみ出す人間に対する冷徹な視線。

そのすべてに嫌悪感を感じるようになった。

はじめはそうした環境が嫌なのだと思っていた。そうした態度を取られることが嫌なのだと思っていた。でも違ったんだ。自分がそうした態度を取らざるを得ない環境に追いやられることが、心底嫌だったんだ。

”非共感的コミュニケーション”を強いられることが。

ぼくは呉服屋、零細印刷会社、ベンチャープロモーション会社、そして誰もが知る大企業のすべてで働いた経験がある。

規模が小さく、知名度も低く、成長する見込みのない企業の従業員の自尊心は低く、手軽なエンタメ(アニメ、ドラマ、アイドル、ギャンブル、風俗など)で日々の疲れを麻痺させている。

そして、「自分はここがお似合いなのだ」と言い聞かせ、現状から抜け出そうとしない。彼らには反骨心がひとかけらもないのだ。

規模は小さいが成長意欲の高いベンチャーの人間は貪欲に仕事から学び、次々と目的の場所へ旅立っていく。彼らの多くは起業し、自分の信じる道をかき分けながら進んでいく。

グローバル規模の大企業は既存事業が外部環境により廃れてくると、他社を買収・吸収し生きながらえる。

そこで働く多くの人間は会社の流れに身をまかせ、組織が世界のすべてとなる。日本企業は簡単に従業員をクビにできないため、不要な人材が滞留し続ける。

そのため、大企業の従業員は生きることへの危機感を持てない。「どう生きるか?」という指針すら存在しない。「誰かがなんとかしてくれる」という思考にハマりやすくなる。

そこで働く人間はどうなるのか?

責任逃れはあたりまえだ。少しでも弱みを見せればスケープゴートにされ、徹底的に叩かれる。組織で上に登るため、下に落ちないため、誰もが必死になる。それが生きる指針にすらなってしまう。誰が悪いという話ではなく、そういうシステムなのだ。

4〜5年前からポッドキャストを始め、自分の力で生きる人々に会ってきた。

彼らは自分の信じるビジョンを持っていた。

世の中に変えたいものがある。自分の生活も理想に向けて変えていきたい。

ただそう思うだけではなく、実際に行動し続けていた。

そして、彼らの言動には”共感的コミュニケーション”があふれていた。

ああ、こんな世界があったのか。

その発見はぼくに新しい視点を授け、それはぼく自身の生きやすさにもつながっていった。

夫婦関係の改善方法は一言では語れない。

だけど、簡単に言うならば、お互いに対して感じている嫌悪感を修正していく作業なのだと思う。

そのために柔らかな気持ちをシェアし合い、誤解を解き、受け止め合い、愛を受け止め、そして与えることに慣れていく。

こうやって言葉にするのは簡単だ。だが、実現のためへのアクションの落とし込みは簡単じゃない。

だけど、十分に挑戦しがいのある課題だ。

これが実現すれば、多くの人が苦しみから解放され、生きやすさを手に入れられるようになる。

ぼくの父は婿養子であったこともあり、ぼくの祖母と折り合いが悪かった。ぼくが子どもの頃、祖母は父の悪口を言い、父は祖母の悪口を常に言っていた。もちろん、母と祖母の仲も良くはなかった。

夕食では誰も喋らず、父は常にイライラしていた。ぼくはそんな2人の間に入り、仲を取り持つカウンセラーのような役目を担っていた。

15歳の時に付き合った恋人の父親は不倫しており、彼女は父親の情事の間、車のなかでよく待たされていた。彼女はリストカットの常習者で、のちに境界性人格障害と診断された。そして、社会人となった2年後、マンションの屋上から身を投げ、帰らぬ人となった。

そんなバッググラウンドのせいか、ぼくは人と人の間に存在する感情のもつれが手に取るようにわかるようになった。

人の嘘もすぐに見破れる。人の感情が蒸気のようにゆらめくのが見えるのだ。

夫婦関係の発信をするようになったのは偶然だった。

三男が生まれた時に3ヶ月間の育休を取り、その間に妻との絆をさらに深めることができた。

恋と愛の違いやオキシトシンの話があまりにも面白く、妻に話しまくっていたところ、妻からブログを書いてみるよう勧められたのだ。

家事、育児、選書、積立NISA、子どものおもちゃなど、雑多なことを書く雑記ブログだったが、ある日たった一つの記事が大きく読まれた。

その記事は何日経っても読まれ続けた。

それは夫婦のセックスレス解消に関する記事だった。

記事には脳科学、進化人類学、家族社会学など、いくつものアカデミックなストーリーを盛り込んだ。

その後も夫婦関係に関する記事ばかりが読まれ、ぼくはnoteで夫婦関係に関する記事だけを書くことに決めた。その後、妻のすすめでVoicyに応募したが落選し、自分でポッドキャストをスタートさせた。

記事を読んだ男性から個人的な相談を受けることが増えた。そして、彼らの悩みを解決させたくて専門家たちにポッドキャストインタビューを申し込んだ。

ポッドキャストは少しずつ聴かれ始め、Apple Podcast恋愛カテゴリーで2位になり、Voicyの審査にも受かり、ビジネスマン向け雑誌DIMEではおすすめポッドキャストに選出された。

夫婦関係の研究をしているとき、ぼくはとてつもなく大きな喜びを感じている。心躍る書籍を読んだり、セミナーを受けているとき、心理士さんとのインタビューの最中、そして、個人相談中に相談者の方の心の扉が開いたときに。

良好なカップルリレーションシップを実現させるための事業はぼんやりと見えてきた。だけど、これが最終解ではないことも知っている。きっと一生答えを探し続けるのだと思う。

会社を辞めてぼくが何をするのか、ちょっとだけ書こうと思う。

最近、世の中ではパートナーシップ事業への注目が少しずつ増えてきた。

ふたり会議を運営する「株式会社すきだよ」が資金調達に成功し、世帯経営ノートや夫婦会議ノートを扱うLogista株式会社は企業内セミナーや自治体との連携を強めている。

他にも個人レベルからベンチャーレベルまで、いくつかの団体がパートナーシップ事業に参入し始めている気配を感じている。

これらのほとんどに共通するのは、夫婦関係悪化の「未然防止」だ。

夫婦間に会話をうながし、育児やキャリアなど様々な課題を乗り越える力を授けること。それが彼らのミッションだ。

彼らが未然防止に注目するのはなぜか?

それが根本的な解決であることはもちろんだが、課題達成が比較的容易だからだ。(とはいえ、既存事業と比べれば死ぬほど難しい。そんな市場、存在すらしていないからだ)

何と比べて容易なのか?

コミュニケーションの断絶、セックスレス、不倫など破滅的な状況からの脱出だ。

こういった状況におちいってしまった夫婦はそもそも会話をする動機がなく、心を開くことすら困難になっている。スマホアプリでお互いの気持ちを書き合うことなんて、とてもじゃないけどできない状況だ。

彼らに必要なものは、お互いの感情を正当なものとして受け止め、起こった出来事に対する感情を修正していく作業だ。

そのためには、カップルリレーションシップに関する心理教育と第三者の介在が必要とされる。知識があれば自分たちに何が起こったのかを理解し、受け止められるようになる。第三者が二人の間に介在すれば、お互いの感情を掘り起こし、共有できるようようになる。

同時に彼らが「やりたい!」と自然に思えるサービス設計も必要だ。夫婦間にビジネスを持ち込むことに嫌悪感を抱く人もいるからだ。

ぼくが入っていくのはその領域だ。

破滅的と思える関係性であっても、すべてではないが立て直すことはできる。仮に別れる決断になったとしても、努力する過程で身につけた知識やコミュニケーションスタイルは一生の財産となる。

ぼくは課題を抱える夫婦の間に存在する、底が見えないほど深い谷に橋をかける。

本来であればこれはカップルセラピスト(臨床心理士)の領域であるため、ぼくは彼らの領域(カウンセリング)には踏み込まない。

ぼくは別の角度からこの世界に入っていく。

男性が夫婦関係を改善できるかどうかは、知識・マインドセット・ピアサポートにかかっている。

そのため、知識を手に入れられるオンラインコースを用意し、定期的な話し合いによってマインドセットを変え、同じ境遇の仲間とのつながりによってピアサポートを実現させる。

過去の経験から、もっとも効果が高いのは週に一回の1on1とチャットの組み合わせによる連続的なサポートだということはわかっている。だが、これはぼくの負荷がかかり過ぎてしまうので、人数を絞る予定だ。継続的な1on1サービスはオンラインコースとは別軸で考えている。

いずれにしても、どちらにも共通するのは投げっぱなしにしないサービスであり、ぼくや同じ境遇の仲間たちとの「つながり」だ。そこはブレてはいけないと思っている。

女性向けサービスの内容はやや異なり、自己効力感の醸成や、自分への思いやりを育むトレーニングを盛り込む。

3年間でこの事業を軌道に乗せ、継続的な資金が確保できたら次のステップにいく。

大学院で臨床心理学を学び、カップルセラピーの臨床を重ね、夫婦の葛藤を解決できるカップルセラピストになる。できれば、Emotionally Focused Therapyをアメリカで学びたい。

まだまだ、ポッドキャストのリスナー数も、noteのフォロワー数も、ニュースレターの購読者数も、ビジネスを始めるには少なすぎることはわかっている。

だけど、自分の心が今だと言っているんだ。

ぼくの妻は言った。

このまま会社で働き続けると、あなたは自殺するだろう。死ぬか起業するか。どっちかを選ぶなら、起業かな。

ぼくにはこの生き方が一番合っている。不安とワクワクをたずさえて、新しい道に進もうと思う。

今週のポッドキャストは「起業について妻がどう思っているか」に関する夫婦配信です。ゆるゆると喋っていますので、お気軽にお聴きください。

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-YouTube

追伸:

93歳の祖母に胃ガンが見つかり、通院の付き添いのため、さっきまで実家のある茨城に戻っていました。今は構内のタリーズで東京に戻る電車を待っているところです。夜に仲のいい同僚が送別会を開いてくれるのです。(これを書いているのは10月24日17:15)

大企業で働く人間をディスったばかりですが、大好きな人間もたくさんいます。彼らの共通点は思いやりがあること、素直であること、誠実であること。

そんな人間が組織で上に成り上がるのは難しいのだけど、ぼくもそんな人間だし、ぼくはそんな人が好きなのです。

幸せな人生というには、思いやりがあり、素直な好奇心にあふれ、誠実であることなのかなと。儲からないし流行りもしない格言でしょうが、そう思っています。

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